ギターや管楽器を飛行機で運ぶとき、知りたいのは「機内に持ち込めるか」と「持ち込めないなら、どう運んでいくらかかるか」の2つです。
結論:国内線では、楽器ケースの3辺合計が115cm以内(100席未満の小型機は100cm以内)なら機内に持ち込めます。ただしJALは各辺が55×40×25cmを超えると預け入れになり、ANAは超える辺があれば係員に申し出てサイズ確認を受けます。ギターはケースに入れると115cmを大きく超えるため、楽器用に座席を買うか、受託手荷物として預けるかの二択です。
この記事では、JAL・ANA・スカイマーク・LCC各社の「持ち込み・座席購入・預け入れ」の条件と料金を表で比較し、楽器別の運び方と、預けるときに破損を防ぐ梱包の手順をまとめました。
結論:持ち込めるかは「ケース込みサイズ」で決まる

まず、この記事全体を貫く原則からお話しします。航空会社は「この楽器なら持ち込める」「この楽器はだめ」というように、楽器の種類で判断しているわけではありません。見ているのは、あくまで荷物としての寸法です。同じギターでも、薄手のギグバッグに入れるか頑丈なハードケースに入れるかで、荷物としての大きさは変わります。判断の対象は楽器そのものではなく、「ケースに入れた状態のあなたの荷物」だと考えてください。
判断の第一歩は「ケースの3辺を測る」
ですから、最初にやるべきことは、航空会社のサイトを読み込むことでも体験談を検索することでもありません。メジャーを用意して、実際に運ぶケースに楽器を入れた状態で、縦・横・厚みの3辺を測ることです。取っ手やポケットのふくらみも含めて、いちばん外側の寸法を測ってください。実際に測ってみると「思ったより大きかった」「意外と収まりそうだ」という発見が必ずあります。感覚で判断せず、まず数字にすることが大切です。
測った3辺と合計はメモしておきましょう。予約時に規定と照らし合わせるときも、航空会社へ電話で相談するときも、この数字があれば話が具体的に進みます。
機内持ち込みの基準は「3辺合計115cm以内」
JAL・ANAの国内線では、楽器ケースの3辺合計が115cm以内(100席未満の機材は100cm以内)なら、持ち込み手荷物として座席上の収納棚に入れられます。ただし各辺の基準(55×40×25cm、小型機は45×35×20cm)を超える場合、JALは手荷物カウンターで預け入れ、ANAは係員に申し出てサイズ確認を受ける決まりです。スカイマーク・Peach・スプリング・ジャパンは通常の機内持ち込み手荷物の条件で判断し、ジェットスターには楽器専用のサイズ基準があります(次の章の表で比較します)。
当てはめると、フルートやクラリネットのような小型の管楽器はケース込みでも収まることが多い一方、ギターは収まりません。たとえばエレキ用ギグバッグの一例(公表外寸106×40×8cm)で3辺合計154cm、アコギ用ギグバッグの一例(同111×46×12.5cm)では約170cmになります。ケースごとの外寸はギターケースの比較表で確かめられます。バイオリンは3辺合計では収まっても、ケースの長さが55cmを超えるため注意が必要です(楽器別の章で扱います)。
ここで大切なのは、目安を超えていても「飛行機で運べない」わけではない、という点です。楽器のために追加の座席を購入して客室に持ち込む方法や、しっかり梱包して受託手荷物として預ける方法が残されています。それぞれの特徴と選び方は、このあとのセクションで詳しく見ていきましょう。
楽器を飛行機で運ぶ3つの方法

ケース込みのサイズを測って現状を把握したら、次に決めるのは「どの方法で運ぶか」です。選択肢は大きく分けて3つあります。客室に持ち込む「機内持ち込み」、楽器のために追加の座席を購入して客室に置く方法、そしてカウンターで預けて貨物室に載せる「受託手荷物」です。どれが唯一の正解ということはなく、楽器の大きさ・価値・予算、そしてあなたがどこまで破損リスクを許容できるかによって、選ぶべき方法は変わります。ここでは3つの方法それぞれの特徴と、実際に使うときのコツを順番に見ていきます。
方法①機内持ち込み|サイズ内なら最も安心
持ち込みサイズに収まる楽器であれば、機内持ち込みが第一候補です。客室に持ち込んで頭上の収納棚に収めるため、搭乗から降機まで自分の目の届く範囲に楽器がある状態を保てます。他人の手に委ねる工程がほとんどなく、3つの方法の中で破損リスクが最も低い運び方だと言えます。フルートやクラリネットのように、ケース込みでも基準に収まりやすい楽器を運ぶ人にとっては、これが基本の選択肢になります。
ただし、機内持ち込みには実務上の注意点があります。頭上の収納棚のスペースは限られていて、早い者勝ちの側面があるという点です。搭乗が遅くなると、自分の座席の近くに楽器を収める場所が残っていないことがあります。楽器を持って搭乗する日は、保安検査を早めに通過し、搭乗開始のアナウンスが流れたらできるだけ早く機内に入ることを心がけてください。満席に近い混雑便で収納場所に困ったときは、遠慮せずに客室乗務員に相談しましょう。楽器だと伝えれば、収納場所を一緒に探してくれたり、扱いに配慮してくれたりすることが多いものです。
もうひとつ大切なのは、収納棚に入れたあとの置き方です。あとから他の乗客の荷物が押し込まれて、楽器に当たる可能性はゼロではありません。ケースが動かないよう奥までしっかり収め、できれば自分の座席から見える位置の棚を選ぶと、飛行中も様子を確かめられます。
方法②楽器用に座席を買って客室へ|大切な楽器の特等席
持ち込みサイズを超える楽器だけれど、貨物室には預けたくない。そんなときの選択肢が、楽器のために追加の座席を購入して客室に持ち込む方法です。JALは「特別旅客料金」、ANAは「座席占有手荷物料金」という名称で制度化しています(料金は次の章の表で比較します)。ギターやチェロのように、ケースに入れると持ち込み基準を超えてしまう楽器を客室で運ぶための定番の手段です。
この方法の最大の利点は、貨物室特有のリスクから楽器を完全に切り離せることです。貨物室では積み下ろしの衝撃や他の荷物との接触が避けられませんが、隣の座席に固定された楽器は、あなたと同じ客室の温度環境の中で、常に目の届く場所にあります。プロの演奏家や高価な楽器の持ち主がこの方法を選ぶのは、追加の座席の代金を「楽器を守るための保険料」と考えているからです。修理の費用や、代わりのきかない楽器を失うリスクと天秤にかければ、座席をひとつ確保するほうが安いという判断です。
追加の座席はWebでは予約できず、JALは国内線お問い合わせ窓口、ANAは予約・案内センターや空港カウンターなどで申し込みます。機内では楽器を座席にベルトで固定するため、大きさや形によっては持ち込めないこともあります。予約の段階で楽器の種類とケースの寸法を伝え、利用できるかを確かめておきましょう。
方法③受託手荷物として預ける|最も手軽、ただし対策必須
3つめは、チェックインカウンターで楽器を預け、貨物室で運んでもらう方法です。受託手荷物の無料枠に収まれば追加費用がかからない場合も多く、手続きも普通のスーツケースを預けるのと同じ流れなので、3つの中では最も手軽な運び方です。楽器用に座席を買うほどではないけれど、持ち込みサイズには収まらない。多くの人にとって、そんな楽器の現実的な落としどころになっています。
ただし、貨物室では輸送にともなう衝撃を避けられないため、預け入れを選ぶならハードケースの使用と中身の梱包対策が大前提になります(リスクの中身と具体的な備えは、後半の梱包の章で詳しくお伝えします)。
3つの方法を整理すると、使い分けの軸はシンプルです。ケース込みで持ち込みサイズに収まるなら、迷わず機内持ち込み。サイズを超える楽器で、高価なものや修理のきかない繊細なものなら、 楽器用の座席購入を検討する。コストを抑えたい、あるいは頑丈なハードケースでしっかり対策できるなら、 受託手荷物で預ける。あなたの楽器がどれに当てはまるかをこの軸で考えたうえで、次の章で紹介する確認項目を航空会社に問い合わせていくと、迷いなく準備を進められます。
航空会社別の規定と料金|JAL・ANA・スカイマーク・LCCを比較
楽器の扱いで差が出るのは、①機内持ち込みの条件、②楽器用に座席を買えるか、③預け入れが無料枠に入るか、の3点です。国内線の普通席・エコノミーで各社の公式情報を比べると、次のとおりです(料金の適用期間と出典は記事末尾)。
| 航空会社 | 機内持ち込み(楽器) | 楽器用の座席(1区間) | 預け入れ(受託手荷物) |
|---|---|---|---|
| JAL | 3辺合計115cm以内かつ各辺55×40×25cm以内、10kgまで | 特別旅客料金:主要路線11,550円 窓口で予約 |
20kgまで無料(個数制限なし) ギター用コンテナを無料貸出 |
| ANA | 3辺合計115cm以内、10kgまで 辺の超過は係員が確認 |
座席占有手荷物料金:11,000〜20,020円 対象運賃のみ |
1個23kgまで無料(個数は運賃次第) 楽器は203cmまでサイズ料金なし |
| スカイマーク | 55×40×25cm以内、10kgまで | 特別旅客料金:12,000円(一部路線10,000円) | 20kgまで無料(1個50×60×120cmまで) |
| AIRDO | 3辺合計115cm以内、10kgまで | 座席占有手荷物料金:全路線11,550円(コントラバスは不可) | 1個23kg・2個まで無料(3辺合計158cmまで) |
| ジェットスター | 楽器は85×36×23cm・7kgまで(持ち込み手荷物1個に数える) | 追加座席:120×45×20cm・15kgまで 料金は問い合わせ |
上位運賃は20kg込み、ほかは有料(空港購入は15kgまで4,600円) 1辺1m超は別途2,500円〜 |
| Peach | 3辺合計115cm以内、2個合計7kgまで | 楽器用座席の案内なし | スタンダード以上は1個無料、最安運賃は有料(2,000円〜) |
| スプリング・ジャパン | 56×36×23cm以内、7kgまで | 荷物用追加座席:75kgまで 料金は問い合わせ |
スプリング運賃以上は20kg無料、最安運賃は有料(20kgまで公式サイト3,000円〜) |
JAL・ANA:座席購入の料金と、預け入れの無料枠
楽器用の座席は、JALが「特別旅客料金」で、2026年10月25日〜2027年3月27日搭乗分は東京=大阪・札幌・福岡・那覇などの主要路線が11,550円です(普通席の場合)。ANAは「座席占有手荷物料金」で、エコノミーは路線区分とシーズンにより11,000〜20,020円。東京=大阪・名古屋は13,090円(ハイシーズン14,080円)、東京=札幌・福岡は17,050円(同18,040円)です。ANAはフレックス・スタンダードなど対象運賃で予約した場合に限られ、当日なら出発の3時間前をめどに購入を済ませる必要があります。
預け入れの無料枠は、JALが1人20kgまで(個数制限なし、1個50×60×120cm以内)です。ANAは2026年5月19日搭乗分から個数制に変わり、エコノミーは1個23kgまで(無料の個数は運賃により異なる)、3辺合計158cm以内が基準です。ただしANAは楽器に限り、3辺合計158cm超〜203cm以下でもサイズ超過料金がかかりません。最初の章で例に挙げたギターケース(154〜170cm)は、この範囲に入ります。
預け入れ用の箱も用意されています。JALはギター用・小型楽器用の輸送コンテナを国内線の全空港で無料で貸し出していて、搭乗当日に出発空港のカウンターで申し出ます(予約不可、預け入れ専用)。ANAのギター・小型楽器用ケースの貸し出しは2026年1月31日で終了しました。
スカイマーク・LCC:持ち込みの重さと座席購入・預け入れの違い
スカイマークは、55×40×25cm以内・10kg以下の楽器なら機内に持ち込めると案内しています。ただし「壊れやすい手荷物(楽器など)を機内に持ち込む場合は座席の購入が必要」とする案内もあるため、サイズ内でも予約時に確かめておくと安心です。座席購入は1区間12,000円(鹿児島=奄美大島線、那覇=宮古〈下地島〉線は10,000円)で、予約センターか空港カウンターで申し込みます。楽器用のコンテナ(内寸48×141×22cm)も各空港にありますが、数に限りがあります。
LCCは持ち込みの重量上限が7kgと厳しめです。ジェットスターには楽器専用の基準があり、85×36×23cm・7kgまでなら客室に持ち込めます。それを超える大型楽器(120×45×20cm・15kgまで)は、追加の座席を買えば座席に固定して運べ、エレキギターのギグバッグならこの大きさに収まります。スプリング・ジャパンにも、隣の座席に楽器を置く「荷物用追加座席」(75kgまで)があります。Peachには楽器用の座席購入の案内が見当たらず、隣を空ける「スペースシートオプション」を買っても、持ち込める手荷物の上限は変わらないと明記されています。
預け入れは、3社とも最安の運賃では有料です。上位の運賃に無料枠が含まれることもあるため、楽器を預けるなら手荷物料金を含めた総額で比べてください。なお、スプリング・ジャパンは2026年12月21日搭乗分から、最長辺が100cmを超える荷物(楽器を含む)に1個2,000円のサイズ超過料金がかかり、ギターケースはこれに当たります。
予約前に確認する5項目
会社のタイプを問わず、予約の前に確認しておきたいのは次の5項目です。これは前の章でお話しした「運ぶ3つの方法」のどれが使えるかを、あなたの楽器と便の組み合わせで具体的に判定する作業でもあります。

- 機内持ち込みのサイズ・重量の上限:ケースに入れた状態の寸法が利用する便の基準に収まるかどうかが、すべての出発点になります。
- 楽器用の座席購入の可否・料金・条件:制度があるかどうかだけでなく、事前手配の方法や申し込みの期限も合わせて確認します。
- 受託手荷物の無料枠と超過料金:無料で預けられる範囲と、それを超えた場合に料金がどう計算されるのかを把握しておきます。
- 賠償の上限と従価料金の扱い:万一の破損に備えて、賠償の上限と、それを引き上げる手続きの有無を確認します。
- 梱包の条件:Peachやスプリング・ジャパンは「適切に梱包されている場合に限り」楽器を受託すると定めています。求められる梱包の水準を先に確かめておきます。
5つの答えがそろえば、どの方法が現実的かを費用込みで比べられます。座席購入や大型楽器の預け入れは予約の段階で航空会社に連絡し、電話で確認した内容は日付と案内の要点をメモしておくと、当日の行き違いを防げます。
国際線はさらに別物
国際線は会社・路線ごとに条件が大きく異なります。JALの国際線も機内持ち込みは3辺合計115cm以内・10kgまでですが、コントラバスやチェロなどの大型楽器は預かれない場合があると案内しています。ANAはサイズを超える楽器は座席の追加購入が必要とし、預け入れでは楽器も手荷物の個数に数えます(例:羽田〜パリのエコノミーで通常の手荷物2個に楽器を加えると、個数超過で20,000円)。乗り継ぎがある場合は、条件の最も厳しい区間に合わせて準備してください。
楽器別の目安|あなたの楽器はどの方法?

ここからは、代表的な楽器ごとに「どの方法で運ぶことになりやすいか」の目安を整理します。ただし、これはあくまでケースに入れた状態の寸法から見た一般的な傾向です。同じ楽器でも、ハードケースかセミハードか、メーカーや型番によって外寸は大きく変わります。最終的な判断は、あなたのケースの3辺を実際に測り、利用する便の規定と照らし合わせて行ってください。そのうえで、ここでの分類は「座席購入の予算を考え始めるべきか」「預け入れの梱包準備を始めるべきか」を判断する出発点になります。
ギター(アコギ・エレキ・ベース)|座席購入か預け入れ
アコースティックギターもエレキギターも、ハードケースに入れた状態では機内持ち込みのサイズ目安を大きく超えるのが普通です。そのため現実的な選択肢は、楽器のために追加の座席を購入して客室に持ち込むか、受託手荷物として預けるかの二択になることがほとんどです。
同じギターでも、エレキよりアコースティックギターのほうがボディが大きく、内部が空洞であるぶん衝撃にも繊細な傾向があります。薄い板を張り合わせた構造は、外からの圧力に思いのほか弱いものです。預け入れを選ぶなら、頑丈なハードケースを用意したうえで、後述する梱包の対策をきちんと行うことが欠かせません。エレキベースはギターより全長があり、ケースの長さが120cm前後になります。JALの預け入れは1個50×60×120cm以内が基準で、それを超える長さの荷物は機材ごとの搭載目安の範囲で扱われるため、ベースはケースの全長を測って予約前に確認しておきましょう。
バイオリン・ビオラ|長さ55cm超に注意、貸出ケースで客室へ
バイオリンやビオラのケースは、3辺合計では115cmに収まることが多いものの、長さが55cmを超えるため各辺の基準を満たしません。そのままの場合、JALでは預け入れ、ANAでは係員に申し出てサイズ確認を受けることになります。
客室で運びたいときに使えるのが、JAL・ANAが用意している機内持ち込み用のバイオリンケース(4/4サイズ用、長さ76〜77cm)です。本体と弓を移し替えれば客室に持ち込め、元のケースは預けます。JALは羽田・成田・伊丹・関西・新千歳・中部・福岡・那覇の各空港で、搭乗当日にカウンターで申し出ます(予約不可)。ANAは申請フォームなら搭乗日の4日前まで、予約・案内センターなら2日前までの予約が必要です。どちらも100席以上の機材で運航する便が対象です。ビオラは4/4バイオリンより大きいため、貸出ケースに入るかを事前に確認してください。
小型の管楽器(フルート・クラリネット・トランペット)|最も身軽
もっとも身軽なのは、フルートやクラリネットといった小型の管楽器です。ケース自体が小さく、各辺の基準(55×40×25cm)にも収まりやすいため、普段のバッグと同じ感覚で客室に持ち込める場合がほとんどです。トランペットは本体の長さが50cm近くあるため、ケースの形によっては長さが55cmを超えます。JALでは超えた時点で預け入れになるので、使うケースの長さを測っておきましょう。
とはいえ、複数の楽器を収めるダブルケースや、譜面や小物まで入る大きめのバッグを使っている場合は、思ったより外寸がかさんでいることがあります。持ち込みを予定しているなら、当日実際に使うケースで一度測っておくと、空港で慌てずに済みます。
サックス・大型管楽器(トロンボーン・チューバなど)|ケース次第・要相談
サックスは、ケースの長さで扱いが決まる楽器です。アルトサックスはコンパクトなケースでも長さが55cmを超えるのが一般的で、JALでは預け入れ、ANAでは係員によるサイズ確認の対象になります。客室に置きたいなら座席購入も視野に入れ、実際に使うケースを測ってから運び方を決めましょう。
テナーサックス以上のサイズや、トロンボーン、チューバといった大型の金管楽器になると、客室の収納棚に収めるのは現実的ではありません。受託手荷物として預けるか、座席を購入して客室に持ち込むかが基本の選択肢になります。大型楽器は、前章で挙げた確認5項目を予約の段階で航空会社に確かめて、運び方を固めておきましょう。
キーボード・電子楽器|「精密機器」として考える
キーボードやシンセサイザーなどの電子楽器で気をつけたいのは、サイズだけではありません。鍵盤や内部の基板は衝撃に弱く、外側に傷がなくても内部が故障している、という事態が起こり得ます。つまり「大きな荷物」ではなく「精密機器」として扱う意識が必要です。預けるなら、ハードケースの中に緩衝材をしっかり詰めて、中身が動かない状態を作ることが前提になります。
また、飛行機で運ぶことにこだわらない、という発想も持っておいてください。大型のキーボードであれば、楽器に対応した宅配便や楽器輸送の専門サービスに任せ、自分は身軽に移動するほうが、結果的に安全で楽なこともあります。重い機材を抱えて空港内を移動する負担まで含めて比べると、私は輸送サービスも十分に現実的な選択肢だと考えています。
破損を防ぐ梱包のコツ|預ける前の5つの備え

楽器を受託手荷物として預けると決めたら、あとは破損のリスクをどこまで下げられるかがすべてです。誤解のないようにお伝えしておくと、航空会社のスタッフが荷物を乱暴に扱っているわけではありません。それでも貨物室では他の荷物と隣り合わせになり、積み下ろしの過程で衝撃が加わる場面をゼロにすることはできません。「丁寧に扱ってもらえるはず」と期待するのではなく、「多少の衝撃は必ずあるもの」と考え、それに耐えられる状態をあなた自身の手で作っておくことが大切です。ここでは、私が特に重要だと考えている5つの備えを順番にご紹介します。
①ハードケースが大前提
何よりも先に確認してほしいのが、ケースの種類です。ソフトケースやギグバッグのまま預けるのは、正直なところ論外に近い選択だと私は考えています(FAQでも触れます)。貨物室に入った瞬間から、あなたの楽器を守れるのはケースだけです。そばで支えてくれる人も、そっと置き直してくれる人もいません。ハードケースは、楽器を守る最後の砦です。ここだけは妥協しないでください。
普段はソフトケース派という人も、飛行機や長距離の輸送を伴う予定があるなら、ハードケースを1本持っておくと行動範囲が大きく広がります。輸送時の安心感が段違いなのはもちろん、自宅での保管中も湿度の変化や不意の衝撃から楽器を守ってくれるため、遠征のない時期にも役立ちます。一方で注意点もあります。ソフトケースに比べて重量が増えるぶん、空港までの移動や乗り継ぎも含めた体力配分は事前に考えておきたいところです。また、ケースの内寸が楽器に合っていないと中で楽器が動いてしまい、かえって危険です。選ぶときは、お持ちの楽器のサイズや形状に合ったものかどうかを必ず確かめてください。
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②弦は少し緩める(弦楽器の定番対策)
ギターやバイオリンなどの弦楽器では、預ける前に弦を少し緩めておくのが定番の対策と言われています。目的は、気圧や温度の変化によってネックにかかる負担を減らすことです。効果のほどには諸説あるものの、多くのプレイヤーが長年実践してきた方法です。
ポイントは「少しだけ」という加減です。すべての弦をだらだらに緩めきってしまう必要はなく、通常のチューニングからほんの少し張力を落とす程度でよいとされています。完全に緩めると、今度は弦の張力とネックの反りのバランスが崩れるという考え方もあるためです。到着後にチューニングし直すことを前提に、軽く緩めておきましょう。この程度の手間でネックへの負担を減らせる可能性があるなら、やっておいて損はありません。
③ケースの中で楽器を動かさない
ハードケースに入れたら終わり、ではありません。次に確認したいのが、ケースの中で楽器が動かないかどうかです。輸送中の破損は、外からの衝撃そのものよりも、衝撃を受けた瞬間に楽器がケースの中で暴れることによって起きる場合が少なくありません。目指すのは、ケースを軽く揺すっても中から音がしない状態です。隙間があればタオルや緩衝材を詰めて、楽器全体がやさしく固定されるようにしてください。
重点的に守りたいのは、ネックの下とヘッドの周りです。弦楽器のネックやヘッドは構造上もっとも弱く、宙に浮いたまま衝撃を受けると一点に力が集中してしまいます。ネックの下にたたんだタオルを敷いて支えを作り、ヘッドの周囲にも緩衝材を添えて、弱い部分を面で支えるイメージで包んであげましょう。なお、カポやチューナー、予備の弦といった付属品をケースの中に同居させるのは避けてください。輸送中に動いて楽器を傷つける原因になるため、付属品は機内に持ち込む別の手荷物へ移しておくのがおすすめです。
④カウンターで「こわれもの」をお願いする
空港のカウンターで預けるときには、中身が楽器であることをはっきり伝え、「こわれもの」としての取り扱いをお願いしましょう。多くの場合、取り扱い注意のシールをケースに貼ってもらえます。シールだけで衝撃がなくなるわけではありませんが、運ぶ人への注意喚起になりますし、ひと言添えるだけでできる備えとして省く理由がありません。
あわせて知っておきたいのが、万一のときの賠償の上限です。JAL・ANAの国内線では、価格を申告していない手荷物の賠償は1人15万円までです。15万円を超える楽器は、預けるときに価格を申告して「従価料金」を払えば、申告額まで上限を引き上げられます。料金は15万円を超える部分の1万円ごとに10円で、たとえば35万円のギターなら200円です。ただし両社とも、楽器のように壊れやすい物の性質から生じた破損は補償の対象外としているため、梱包の手間は省けません。移動の多いプレイヤーは、輸送中の事故も対象に含む楽器保険を検討するのも一つの方法です。
⑤到着後はすぐに弾かず「慣らし」を
破損の有無だけは、荷物を受け取ったらカウンターを離れる前にその場で確認してください(手順はFAQで触れます)。そのうえで、演奏の再開は急がないことが大切です。貨物室と地上では温度も気圧も大きく異なるため、輸送後の楽器はチューニングが狂っているのが普通です。狂っていること自体は故障ではないので、慌てる必要はありません。
移動先に着いたら、すぐに弾き始めるのではなく、ケースを閉じたまましばらく室温に置いて楽器をゆっくり慣らし、そのあとでケースを開けてチューニングをやり直しましょう。急激な温度変化は、楽器の表面に結露を生む原因にもなります。冷房の効いた機内から真夏の屋外へ、あるいは冬の寒空から暖かい室内へと、寒暖差が大きい季節ほど時間をかけてください。ここまでの5つの備えを積み重ねれば、預け入れにともなう不安はかなり小さくできるはずです。あなたの楽器が無事に目的地へ着くように、出発前のひと手間を惜しまないでください。
楽器の飛行機持ち込みでよくある質問

検索の多い質問に、結論から答えます。
Q. JAL・ANAの機内にギターは持ち込めますか?
ケースに入れたギターは3辺合計115cmを超えるため、そのままでは持ち込めません。客室に置くなら楽器用に座席を買い(JALは特別旅客料金、ANAは座席占有手荷物料金)、座席に固定して運びます。座席はWebでは予約できないので、電話窓口などで早めに申し込んでください。
Q. 飛行機にギターを預ける料金はいくらですか?
JAL・ANA・スカイマーク・AIRDOは、無料手荷物の範囲(JALとスカイマークは合計20kg、ANAとAIRDOは1個23kg)に収まれば追加料金はかかりません。LCCは最安運賃だと有料で、ジェットスターは空港で買うと15kgまで4,600円に、1辺1m超の荷物の料金(オンライン2,500円・空港3,000円)が加わります。スプリング・ジャパンは公式サイトで買えば20kgまで3,000円からです。
Q. ソフトケースのまま預けられますか?
預けること自体はできても、おすすめしません。貨物室では他の荷物との接触や積み下ろしの衝撃を避けられず、ソフトケースでは楽器を守りきれないからです。JAL・ANAとも、楽器のように壊れやすい物の性質から生じた破損は補償の対象外としています。ソフトケースしかないなら、機内に持ち込めるサイズの楽器に限るか、座席を買って客室へ持ち込む方法を検討してください。
Q. 楽器が壊れていたらどうすればいいですか?
受け取ったらその場でケースを開けて状態を確かめ、破損があればカウンターを離れる前に係員へ申告してください。時間が経つほど、輸送中に起きた破損かどうかの確認が難しくなります。JAL・ANAの賠償上限は1人15万円なので、それより高価な楽器は預ける前に従価料金で上限を引き上げておきましょう(梱包の章の④で説明しています)。
Q. 新幹線のほうが楽器を運びやすいですか?
楽器を自分のそばに置いておきたいなら、新幹線は有力な選択肢です。東海道・山陽・九州・西九州新幹線では、楽器は3辺合計160cm超の「特大荷物」の予約ルールの対象外で、3辺合計250cm(長さ2m)・30kg以内の手回り品として持ち込めます。座席後ろの特大荷物スペースを使いたい場合だけ「特大荷物スペースつき座席」の予約が必要です。大型のキーボードなどは、楽器輸送に対応した宅配サービスに任せる方法もあります。
まとめ|楽器の空の旅は「事前確認」がすべて

最後に、この記事の要点を4つに絞って振り返ります。
- 持ち込めるかはケース込みのサイズで決まります。JAL・ANAは3辺合計115cm以内(小型機は100cm)で、JALは各辺55×40×25cm以内も条件です。LCCは重さ7kgまでと厳しめです。
- ギターなど基準を超える楽器は、座席購入か預け入れです。座席はJALの主要路線11,550円、ANA 11,000〜20,020円、スカイマーク12,000円。預け入れはJAL・ANAなら無料枠内で追加料金なし、LCCは運賃しだいで有料です。
- バイオリンはケースの長さ55cm超に注意します。JAL・ANAの貸出ケースに移し替えれば客室に持ち込めます。
- 預けるならハードケースと、隙間を埋めて楽器を固定する梱包が必須です。15万円を超える楽器は、従価料金(超える部分1万円ごとに10円)で賠償上限を引き上げておきましょう。
規定と料金は改定されることがあります(ANAは2026年5月19日搭乗分から手荷物ルールを変更、スプリング・ジャパンは2026年12月21日搭乗分から変更予定)。予約前にケースの3辺を測り、利用する航空会社の公式サイトか電話で最新の条件を確かめてください。
出典・確認先
料金・条件は2026年10月27日に各社の公式サイトで確認しました。JALの特別旅客料金は2026年10月25日〜2027年3月27日搭乗分、ANAの座席占有手荷物料金は2026年5月19日以降搭乗分のエコノミーの金額です。
- JAL:楽器をお持ちの方/特別旅客料金のご案内/お預けのお手荷物/お手荷物の不具合について
- ANA:楽器(国内線)/各種料金のご案内(国内線)/無料でお預かりする重さ・サイズ・個数/楽器(国際線)
- スカイマーク:機内に楽器を持ち込むことはできますか?/隣りの座席を1席確保することはできますか?/お預けの手荷物/貴重品のお預かり
- AIRDO:楽器について/機内持ち込み手荷物について/お預かりする手荷物について
- ジェットスター:楽器の機内持ち込みについて/空港での手荷物の追加購入・料金について/サイズの大きな手荷物
- Peach:機内持ち込み手荷物について/Peachの運賃タイプ/スペースシートオプション
- スプリング・ジャパン:機内持ち込み手荷物について/お預けの手荷物について
- JR西日本:新幹線への荷物の持ち込み






