JC-120のパワーアンプと、アンプシミュレーターを活用した安定した音作り

リターン接続の解説図 ギター

スタジオやライブハウスにいくと思うような音にならない経験ありませんか?そんな悩みを解決する一つの方法を紹介します

はじめに

Roland JC-120は、1975年の発売以来、世界中のギタリストに愛され続けているソリッドステートアンプです。特にクリーンなサウンドとステレオ・コーラスの美しさは他に類を見ない魅力で、ジャズ、フュージョン、ポップス、さらにはハードロックのクリーントーンまで、幅広いジャンルで活用されています。

ギターアンプ Roland JC-120

また、JC-120はその堅牢性と安定性から、全国のリハーサルスタジオやライブハウスに常設されていることが多く、プロ・アマ問わずギタリストにとって非常に馴染み深いアンプでもあります。どこの現場に行っても「JC-120ならある」という環境が一般的なため、このアンプを使って自分の音作りを確立できれば、場所を選ばずに常に“自分の音”を出すことが可能になります。

しかし、JC-120の通常のインプット(INPUT端子)を使って音を作る場合、そのプリアンプ部の特性が強く出てしまうため、特に中高域に独特のクセが現れがちです。これにより、マルチエフェクターや外部ペダルで丁寧に作り込んだサウンドがJC-120本体のキャラクターによって変化してしまうという問題が発生します。結果として、意図した音作りの幅が制限されることになり、ライブやレコーディングにおいて一貫したトーンを保つのが難しくなるのです。

この問題を解決する方法として有効なのが、「アンプシミュレーター」と「リターン接続」の組み合わせです。マルチエフェクターに内蔵されたアンプシミュレーターを活用し、JC-120のプリアンプをバイパスしてパワーアンプに直接信号を送ることで、作り込んだサウンドをそのまま出力することが可能になります。この手法を使えば、スタジオでもライブでも、自宅と同じセッティングで理想の音を再現できるのです。

この記事の読んでわかること

本記事では、そんなJC-120の内部構造(プリアンプとパワーアンプの役割)を明らかにし、マルチエフェクターのアンプシミュレーターを活用したリターン接続によって、いつでも安定した音作りを可能にする方法について詳しく解説します。

JC-120の構成:プリアンプとパワーアンプの役割

JC-120は、伝統的な真空管アンプとは異なり、ソリッドステート(トランジスタ)回路を採用しています。内部は大きく以下の2つに分けられます。

■ プリアンプ部

  • ギターからの信号を受け取り、音量・音質(EQ)を整える役割を果たします。
  • JC-120は2チャンネル仕様で、NORMALチャンネルとEFFECTSチャンネルがあり、後者には内蔵エフェクト(リバーブ、コーラスなど)が装備されています。

■ パワーアンプ部

  • プリアンプから送られた信号を増幅し、スピーカーから出力する役割を担います。
  • JC-120はステレオ仕様で、2基のパワーアンプを内蔵しており、広がりのあるサウンドを実現します。

このように、JC-120はそのクリーンなサウンドと高い再現性により、外部エフェクトとの相性が非常に良く、特にマルチエフェクターとの連携で真価を発揮します。

以下の図は通常の接続方法です

ギターのアンプ接続

1. リターン接続とは?JC-120を「パワーアンプ」として使う

JC-120の背面にあるリターン端子にマルチエフェクターを直接接続すると、JC-120本体のプリアンプをバイパスし、パワーアンプとスピーカー部分だけを使うことができます。
これにより、マルチエフェクターのアンプシミュレーターで作ったトーンがそのまま出力されるため、スタジオやライブハウスでも自分の音を再現しやすくなります。

JC-120の背面パネルです

ギターアンプ JC-120背面

リターン接続の概略図です

ギターアンプへのリターン接続

ポイント:

  • この接続だとJC-120のEQやボリュームは使えないので、音量調整はエフェクターやアンプシュミレーター側でおこなう
  • リターン端子を使うことでJC-120のキャラクターの影響を最小限に出力可能
  • フルレンジに近い特性のJC-120だからこそ相性が良い

2. マルチエフェクター側の設定:アンプシミュレーターをONにする理由

リターン接続では、アンプのキャラクターが乗らないため、マルチエフェクター側でしっかり「アンプの味」を作り込む必要があります。
このとき、アンプシミュレーターやIR(キャビネットシミュレーター)をONにし、自分好みのアンプ設定をプリセット化しておくのが鉄則。


3. セッティングの再現性を高めるテクニック

スタジオやライブハウスではアンプの位置や向き、音量によって音色が変わって聴こえる為、練習やライブの時の音量で事前に音色を調整しておくと音色の再現度がアップします。

  • 音色の調整をする時は音量を合わせた上で調整する

まとめ

JC-120のリターン接続を活用すれば、マルチエフェクターで作った音を忠実にアウトプットできるため、どの会場でも「いつもの音」を再現しやすくなります。これはライブミュージシャンにとって大きなメリットです。一方で、アンプの補正力が効かない分、マルチエフェクター側での音作りの完成度が求められます。アンプシミュレーターの設定、EQバランス、出力レベルのチェックなど、音作りの基礎をしっかり押さえることが安定感に直結します。特にリターン接続は調整した原音の特性が出やすいので、PAへのライン出力との整合性も重視しましょう。機材の設定をテンプレート化したり、毎回同じ環境を再現する工夫も大切です。どんな現場でも安心して演奏に集中できるように、この接続方法を使いこなしてみてください。あなたのギターサウンドが、より一貫性のあるプロフェッショナルなものになるはずです。

マルチエフェクター