子犬のワルツを解説|曲名の由来・構成と軽やかなリズムの仕組み

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれます。

ミュージック

子犬のワルツは、ショパンのワルツ変ニ長調作品64第1番。回るような右手と、三拍子を刻む左手が軽さを生みます。

曲名の逸話と譜面の事実を分け、構成、リズム、中間部の歌い方を順に読み解きます。音符を追うのが得意でなくても、伴奏の入口と旋律の変わり目が分かると、短い曲の中の景色の違いを聴き取りやすくなります。

主部A・中間部B・回帰A′・終結を横に並べる構成の見取り図
四つのパネルは曲の流れを示します。横幅は演奏時間の比率ではありません。

※この記事にはアフィリエイトリンクが含まれています。

子犬のワルツとは?作品64第1番の基本

子犬のワルツはピアノ独奏のためのワルツで、変ニ長調、4分の3拍子の作品です。「ワルツ第6番」と「作品64第1番」は、同じ曲を別の数え方で示しています。

作品番号のOp.は、作品を整理するための番号を表す略記です。作品64は三つのワルツを含む組で、その最初の曲が本作。ワルツ集の中で第6番と数える呼び方と、作品64の中の第1番という呼び方を混ぜると、別の曲に見えてしまいます。録音や楽譜を探すときは「Chopin」「Op.64 No.1」「D-flat major」の組み合わせを目印にすると確実です。

変ニ長調は、レの音を半音下げたレ♭を中心とする長調です。楽譜の最初には五つの♭が付いていますが、これは音を暗くするという意味ではありません。基本になる音の配置を示す約束であり、曲全体は明るい響きから始まります。鍵盤では黒鍵を多く使うため、見た目の記号の多さと指の動かしにくさも、そのまま比例するわけではありません。

成立について、ピティナ・ピアノ曲事典は1846〜47年、出版を1847年と整理しています。ショパンの晩年の小品であり、長い交響曲のように展開を積み重ねる作品ではありません。しかし、短い音型、つまり音の並びの組み合わせ、伴奏が入る時期、中央の歌、終わりの下降を組み合わせ、限られた長さに強い対比を作っています。

献呈先はデルフィナ・ポトツカ伯爵夫人です。献呈とは、楽譜の表紙などに相手の名を掲げて作品をささげること。子犬に関する呼び名、献呈を受けた人物、作品に書かれた速度指示は、それぞれ役割の異なる情報です。これらを一つの物語にしてしまわず、曲を特定する情報から押さえると、後の由来も整理しやすくなります。

曲名の由来は子犬の回転にまつわる逸話

「子犬のワルツ」という通称には、ジョルジュ・サンドの飼っていた犬が自分の尾を追って回る姿から着想した、という逸話があります。ヘンレ出版社もこの話を紹介していますが、犬の動作と個々の音を対応させる作曲者の指示があるわけではなく、「この音は足音」といった連想は聴き手が楽しむ想像の領域です。

表記には「子犬」「小犬」「仔犬」が見られます。少なくとも本作については、表記が違うだけで別のショパン作品になるわけではありません。全音の楽譜名は『小犬のワルツ』、この記事の題名は『子犬のワルツ』です。検索で表記が揺れても、作品番号64第1番と変ニ長調が一致しているかを見れば、曲の取り違えを防げます。

もともとの作品の種類はワルツです。ワルツとは、三拍子を基本にする舞曲。ショパンのピアノ作品では、踊りの拍感を受け継ぎながら、独奏として聴かせる細かな表情が書き込まれています。実際に社交ダンスを伴う音楽と同じ速さやアクセントを要求する、という理解に限定する必要はありません。

犬の逸話を知ってから聴く場合にも、まず二つの音楽上の事実を探すと鑑賞が深まります。一つは近い高さを往復する右手の音型、もう一つは低音と和音に分かれる左手の伴奏です。情景を思い浮かべる楽しさに加え、どの音の動きがその連想を支えているかまで結び付けられます。

Minute Waltzは1分で弾けという指示ではない

英語の呼び名「Minute Waltz」を、演奏を60秒に収める条件として読む必要はありません。譜面が求めるのは生き生きとした動きであり、所要時間の記録ではありません。

冒頭の速度指示はMolto vivaceで、とても生き生きと、活発にという意味です。さらにleggieroという「軽く」の指示が加わります。この二つを一緒に読むと、急いで音を詰め込むだけでは足りないことが分かります。速くても音が重く固まっていれば、軽さの指示とは異なる響きになってしまうからです。

ピティナに掲載された演奏例にも、1分台後半から2分前後の長さが見られます。ただし、これは録音の表示情報による例で、全ての演奏の標準時間を定めるものではありません。繰り返しの扱い、間の取り方、残響を含む収録の切り方でも表示は変わります。

練習でも、短い時間で終えることを先に目標にすると、中央の長い旋律まで同じ勢いで流れがちです。主部の回転、中間部の歌、再び戻る回転という対比を保ったうえで、全体の速度を考える順番が向いています。所要時間は、その表現の結果として決まるものと捉えると、この愛称に引っ張られずに聴けます。

曲の構成は主部・中間部・回帰の三部形式

大きな構成は、回転する主部A、歌う中間部B、主部が戻るA′の三部形式です。A′は、最初の材料が変化を伴って戻ることをこの記事で示す記号で、譜面に印刷された区分名ではありません。A′の入口ではトリルと右手だけの動きが橋渡しをし、最後には長い下降が終わりを告げます。

三部形式とは、違う性格の中央部分を挟んで最初の音楽が戻る作りのこと。三つの部分が同じ長さである、あるいは三つの独立した曲に分かれるという意味ではありません。ここでは細かな小節のまとまりをすべて別の記号にするより、耳で追える大きな役割を地図として使います。

部分 耳で分かる入口 注目する変化
主部A 右手だけの回転から伴奏が加わる 短い音型と三拍子の重なり
中間部B 長めの音を中心にした歌へ移る 旋律の持続と半音による色の変化
回帰A′ 長いトリルを経て回転が戻る 入口の浮遊感と伴奏が戻る位置
終結 高いところから下降して締める 回転を終わりの方向へ導く動き

小節を追う場合、ピティナの解説では中間部の開始が第37小節と示されています。この記事ではヘンレHN662の公開譜面を照合し、冒頭は第1小節から数えています。録音の何秒に当たるかは演奏ごとに異なるため、時刻を固定した案内ではなく、音楽の目印と小節番号を組み合わせて探してください。

形式の地図を使う一回目の鑑賞では、細かな装飾を数える必要はありません。回転が始まる、歌に変わる、回転へ戻る、下降して終わる、という四つの出来事をメモします。二回目にその間のつなぎ方へ耳を向けると、単純にAを貼り直した曲ではないことが見えてきます。

最初の4小節は右手だけで回転を予告する

冒頭の第1〜4小節には左手の伴奏がなく、第5小節から低音と和音が加わります。先に回転を見せ、後から三拍子の足場を置くことで、音楽の輪郭がはっきりします。

最初から左手の「一・二・三」が鳴っているつもりで聴くと、冒頭の面白さを取り逃がします。右手だけでも音の長さはきちんと書かれていますが、低音がないため、地面に足を着けるような拍頭、つまり拍の始まりの感覚は弱めです。第5小節の低音を境に、同じ回る動きが、踊りの伴奏に乗った音楽として聞こえ始めます。

冒頭の回転を担う核は、ソ♮・ラ♭・シ♭・ラ♭という近い高さの往復です。ここで♮は、それまで♭になるはずの音を元の高さへ戻す記号。変ニ長調の調号、つまり曲頭にまとめて示す♭や♯があっても、ソを必要な位置で自然なソへ変えることで、ラ♭の周囲を巡る動きが作られます。単純な音階を上り続けるのとは違う形です。

第1小節には長めの入口もあるため、「最初から最後まで全部同じ八分音符」と丸めないことも大切です。主題、つまり曲の中心になる旋律の核となる動きが現れた後、違う高さへ進むところ、長さを変えるところ、装飾を加えるところが続きます。短い型の反復を出発点にしながら、その型から離れる瞬間が次のフレーズ、つまりひとまとまりの音楽の流れを作っています。

軽やかなリズムの仕組みは左右の役割の違い

左手は一小節三拍の枠を示し、右手はその上を八分音符中心の細かな動きで進みます。軽さの核心は、両手が同じものを強調し続けず、伴奏の拍と旋律のまとまりが少し違って聞こえることです。

4分の3拍子では、四分音符を一拍として一小節に三拍入ります。八分音符はその半分の長さなので、基本的な小節を八分音符で埋めれば六つ分です。「三拍子なのに右手には六つの音がある」という見え方は矛盾ではなく、拍をさらに二つに分けているためです。音の個数と拍の数を分けると、両手の関係を読みやすくなります。

主部のよく動く音型を、一律に十六分音符の連続と説明するのは正確ではありません。速く聴こえることと、譜面に書かれた音符の種類は別です。八分音符が速いテンポで続くだけでも十分に細かく聞こえます。曲の途中には別の音価、つまり音符が示す長さや、装飾もあるので、ここでは主部の基本形を説明しています。

左手は低音・和音・和音で三拍の重みを分ける

伴奏の基本形は、1拍目に低音、2拍目と3拍目に上の和音を置く形です。三つを同じ重さで打つより、低音が支点、後の和音が応答と聞こえると、ワルツの動きが浮かびます。

ピアノの低い側の鍵盤と左手を写した写真風の練習場面
左手の伴奏を考える場面の生成イメージです。この曲の実際の運指や打鍵位置を再現した写真ではありません。

和音は複数の音を同時に鳴らした響きのこと。低音は和声の土台を示し、その後の和音が響きを補います。和声とは、複数の音が作る響きとその進み方のこと。左手の距離が離れているのは単に演奏を難しくするためではなく、低い支えと高い伴奏を別の場所で鳴らすためです。二つの高さを往復する動作が、耳には一つの伴奏としてつながります。

聴くときは、まず右手の速い音を追うのをやめ、低い音だけを探してみます。次の低音までに上の和音が二回続く場所が分かれば、一小節の枠をつかめています。その枠を感じたまま右手へ注意を戻すと、旋律が拍から自由に見える理由を、伴奏を失わずに味わえます。

弾く場合の課題は、左手を小さくすることだけではありません。小さく弾いても、2拍目と3拍目の和音が長く居座れば、響きは詰まります。逆に低音まで短く切り捨てると、土台が見えにくくなります。低音の方向、上の和音の長さ、次の低音への移動を分けて試すと、「軽く」の中身を具体的に調整できます。

この伴奏形は作品を読む基本であり、全ての小節を同じ指使いと音の長さで処理する指示ではありません。和音の形が変わる場所や、両手の動きが終結へ向かう場所には、それぞれ譜面の事情があります。まず通常の形を知り、その形が変わる位置を変化として聴くのが役立ちます。

右手の4音のまとまりは小節線とずれる

回る音型を八分音符四つのまとまりとして捉えると、一小節六つ分の枠には収まり切りません。二小節の十二個分を使うと、四つずつの三群と、三拍ずつの二小節を同時に見渡せます。

八分音符12位置に6拍と4音ずつの3群を重ねる説明図
1〜12は2小節に並ぶ八分音符の位置、金色の丸は各拍の始まりです。Bの4音は小節線をまたぎます。

同じ長さの升目を十二個並べ、左手の拍を二升ごと、右手のまとまりを四升ごとに印を付けると違いが明瞭です。左手の一小節は六升なので、小節の境界は六つ進んだところ。一方、四つのまとまりは四・八・十二と進み、途中のまとまりが小節線をまたぎます。図では仕組みを示すため、まとまりの始点をそろえた模式例にしています。

八分音符の位置 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
拍の入口 1拍 — 2拍 — 3拍 — 1拍 — 2拍 — 3拍 —
4音群の例 A A A A B B B B C C C C

これは、二小節を大きな三つのまとまりとして感じるヘミオラを理解する入口です。ヘミオラとは、同じ時間の中で二つ組と三つ組のまとまりが交錯するリズムの扱い。曲が途中で4拍子に変わることでも、片手だけ勝手な速さで弾くことでもありません。細かな音の間隔は共有したまま、大きな区切りの感じ方が違っています。

実際の位置とつなぐなら、左手が入る第5〜6小節を見ます。右手の十二音は「ソ♮・ラ♭・シ♭・ラ♭・ソ♮・ラ♭|シ♭・ラ♭・ソ♮・ラ♭・シ♭・ラ♭」。縦線が小節の境界です。最初の四つ、次の四つ、最後の四つを囲むと、同じ「ソ♮・ラ♭・シ♭・ラ♭」が三回あり、二番目の群は小節線をまたいでいると確認できます。

表の位置に当てはめると、A群は第5小節の1〜2拍目、B群は同小節の3拍目から次の小節の1拍目、C群は第6小節の2〜3拍目です。左手の低音は位置1と7へ入りますが、右手の群の入口は1・5・9です。位置7では左手が新しい小節を始めても、右手はB群の途中にいる。この同時点を確かめると、単に両手が違うものを弾くという説明から一歩進めます。

聴く練習では、まず第5〜6小節の左手の拍を六つ数え、その後に右手の四音を三群としてたどります。同じ区間を二通りの大きさで数え直せるかが確認点です。四音の先頭を聞き取れなくても、一定の三拍の伴奏を残しながら、右手が小節線を越える場所を譜面で見つけられれば、二つのまとまりの違いを捉えています。

演奏で四つの先頭を毎回強くたたくと、仕組みは分かりやすくても旋律が角張ってしまいます。分析のための印と、実際に付けるアクセントは区別します。まとまりを心の中で感じながら、譜面のフレーズと強弱に従って流す。その違いを保つことで、整った三拍子の中に転がるような動きが生まれます。異なる細分数を同時に重ねる例は、幻想即興曲の4対3の解説で比べられます。本作の四音のまとまりは同じ八分音符上の区切り、4対3は同じ時間を別の数で割る関係で、同じ意味ではありません。

三連符は一拍の中の分け方を一時的に変える

第21小節付近では、基本の八分音符の動きに三連符が加わります。三連符は、一拍を普段の二つではなく三つの同じ長さに分ける書き方で、曲の拍子を三拍子にしている理由とは別です。

四分音符一拍を「タ・タ」と二つに分けるのが、ここまで説明した通常の八分音符です。同じ一拍を「タ・タ・タ」と均等に三つへ分ければ、一つの音は少し短くなります。どちらも終わったところで次の拍へ進むので、三連符があるたびに一小節が長くなるわけではありません。速い音を一つ余分に押し込むというより、一拍の内側の配分を替えると理解します。

HN662の第21小節では最初の拍に3の数字が付き、その後に通常の八分音符の動きが続きます。したがって、この小節を「三つ・二つ・二つ」と三拍に分けて眺めると、細かい音の個数が七つでも、拍の枠は三つのままだと分かります。数字の3は音符の上のまとまりを示しており、拍子記号の3と同じ場所に書かれているわけではありません。

この部分で細かな音だけを数えると、音数の多い最初の拍を長く取って、次の拍へ遅れてしまうことがあります。左手の三拍を一定に感じながら、最初の拍だけを三等分して確かめると、どの区間へ音が入るかをつかめます。速い演奏の中で一瞬きらめく装飾も、土台の拍を延ばさずに入るから、前へ進む力を保てます。

四音型のまとまりと三連符の区別も必要です。四音型の話は、複数の拍をまたいでどこを一つの形として聞くかという問題。三連符の話は、一拍の内部をいくつに分けるかという問題です。譜面の3を見つけたらまず一拍の境界を確かめ、四つの型を探すときは小節線を越えて追う。このように見る範囲を替えると、二つの説明を混ぜずに使えます。

三連符を入れた同じ主題の再提示を聴くと、主題が一回目と同じ骨格を保ちながら、表面の動きを変えていることが分かります。繰り返しを単なる同じ音楽の再生と捉えるより、知っている形のどこが飾られたかに注目すると、短い主部の中にも小さな変化を発見できます。

中間部は旋律を保ちながら響きの色を聴く

中間部のsostenutoは、音を支え、持続させるように歌う指示です。回転の主部に比べて長い音が前に出るため、速さの印象だけでなく、旋律のつながり方が変わります。

leggieroの軽い回転とsostenutoの長い旋律の対比図
円と長い線は音型の性格の対比です。線の長さは音価や音量の測定値を表していません。

sostenutoは、ピアノに付いているソステヌートペダルを必ず使う、という指示ではありません。ここでは音楽の性格や保ち方を表す言葉です。音の切れ目をどのように感じさせるか、長い旋律をどこへ運ぶかが中心になります。楽器のペダル名と同じ言葉でも、譜面で使われる意味を文脈から読みます。

旋律がゆったり聞こえる間も、伴奏の三拍子が作品を支えています。右手が一音を長く保つと、その音の下で和音が変わり、同じ旋律音の感じ方が少しずつ変化します。旋律の高さだけを追う鑑賞から、旋律と伴奏の組み合わせを聴く鑑賞へ切り替えると、中央部分が単なる休憩ではないことが分かります。

ピティナの分析は、この部分で変イ音、つまりラ♭が目立つことや、半音進行を取り込む動きを指摘しています。半音は鍵盤上で隣り合う最も近い音の間隔です。大きく跳ぶ動きに比べて変化が目立ちにくい一方、響きの構成音が少しずつ変わると、穏やかな旋律にも陰影が生じます。明るいか暗いかの二択だけで表すと、その細かな移り変わりが抜けてしまいます。

短い装飾音が聞こえる場所では、その小さな音を主旋律と同じ重さにせず、どの長い音へ向かう動きなのかを探します。装飾音とは、旋律を飾る短い付加音のこと。かわいらしい音色として聴く楽しみもありますが、それだけを切り取らず、次に落ち着く音と一緒に聴くと、歌の流れの一部として理解できます。

回帰と終結では戻り方と下降の方向を追う

回帰の入口には長いトリルが置かれ、その後に回る主題と左手の伴奏が戻ります。最後の下降は、周囲を巡っていた動きを一方向へ変え、短い作品を鮮やかに閉じます。

69〜72小節のトリル、73〜76小節の右手、77小節の伴奏復帰を並べる図
第69〜72小節の準備から、右手、伴奏の順に戻る流れです。鍵盤と丸は実際の音高・運指を写した譜例ではありません。

トリルは、隣り合う二つの音を素早く交替させる装飾です。HN662では第69〜72小節にわたって長い音とトリルの表示が続き、この間の左手は休みます。中央の歌が終わって、すぐ両手の伴奏が再開するわけではありません。低音がなくなることで、音楽が再び宙に浮いたように感じられる入口が作られています。

第73小節からは右手の回転が動き出し、第77小節から左手の伴奏が加わります。最初の4小節を右手だけで始めた仕掛けが、ここでも姿を変えて働いています。戻ってきた主題を知っているからこそ、低音の復帰を待つ時間が、冒頭とは違う期待を生みます。

終わり近くには、24という数字が付いた長い下降の連符が現れます。連符とは、まとまった時間に通常と違う数の音を入れる書き方のこと。ここでは高い音域から広く駆け下りるため、近い高さを巡っていた主題の回転と、視覚的にも聴覚的にも方向が違います。

下降の到着先には変ニ長調の終わりの和音があります。高いところから下がってきた右手と低音の支えが、最後の響きへ集まることに注目すると、最後の速い音をばらばらの飾りでなく、一つの到着へ向かう動きとして聴けます。下降の始まりだけで注意を切らず、その先の和音までを続けて追うのが、終わりをつかむ目印です。

難しさは速い指だけでなく軽さの維持にある

原曲の難所は、右手の粒をそろえること、左手の跳躍を伴奏として収めること、中央で歌い方を切り替えることです。年齢や教本名だけで弾ける時期を一律に決めるより、三つの課題を別々に見た方が実用的です。

右手の音が不均等になる場合は、速い音の数そのものより、どこで手の位置や指の組み合わせが変わるかを探します。同じ回転の型を繰り返す場所と、そこから次の高さへ移る場所では、準備の仕方が異なります。通し演奏で毎回同じ箇所が詰まるなら、型の境界を譜面に印し、前後の数音をつないで確認すると原因を絞れます。

左手が慌ただしく聞こえる場合は、低音から上の和音へ行く動作と、次の低音へ戻る動作を分けます。移動先を目で確認できても、手が遅れて和音を急いで押せば、2拍目が強く飛び出します。無理なく移動できる速さで、上の和音を鳴らした後の余裕を作る練習が、伴奏の落ち着きにつながります。

中間部だけ表情が変わらない場合は、速度を大きく落とす前に、旋律の長い音をどこまで聴いているかを確認します。右手を単独で歌わせ、息継ぎを感じる位置を一つ決めてから伴奏を足すと、単なる遅い区間ではなく、旋律の方向を持つ中央部分になります。主部と同じ短い手触りを続けないことが課題です。

困っていること 切り出して確かめる対象 次へ進む目印
右手が特定の場所でもつれる 反復音型から次の形へ移る前後 同じ音価が急に詰まらずつながる
伴奏の和音が飛び出す 低音→和音→次の低音の移動 1拍目の支えと後の和音を区別できる
中央が単調になる 長い旋律とその下の響きの変化 一音を保つ間も行き先が聞こえる

メトロノームは一定間隔で拍を鳴らす道具です。この曲では、まず四分音符の三拍を確認できる設定が分かりやすいでしょう。自分の手で音型と移動を保てる速さから始め、数字を上げた後に一部の拍だけ縮んでいないかを比べます。どの人にも同じ開始速度や、一定の練習月数が当てはまるわけではありません。

ペダルを長く踏んで細かい不揃いを隠そうとすると、主部の輪郭や和声の変わり目までぼやけることがあります。まず手だけで役割を分け、その後に使う譜面の指示と楽器の響きに合わせて足します。広い部屋で響くピアノと、短く音が消える環境では、同じ足の動きでも結果が違うため、耳で確かめる対象は踏み方の形より音の重なりです。

録音は速さより伴奏の入口と歌の対比で比べる

聴き比べでは、冒頭の伴奏が加わる瞬間、中央の長い旋律、回帰前の空間を同じ観点で比べると違いが分かります。演奏時間が短い録音ほど優れている、という順位にする必要はありません。

ピアノのそばにヘッドホンと録音機とノートを置く写真風の場面
録音を聴き返してメモする場面の生成イメージです。特定の演奏・機器の試聴記録ではありません。

最初の比較点は、第5小節の低音がどのくらい明瞭に感じられるかです。右手の動きが前面に出る演奏では低音が控えめに聞こえ、伴奏をしっかり支える演奏では踊りの枠がつかみやすくなります。同じ音を弾いていても、どの層を耳に届けるかで、回転の軽さと拍の安定の印象が変わります。

次に中央の旋律を聴きます。長い音をどこまで保つか、次の音までをどのようにつなぐか、伴奏をどの程度前に出すかを一つずつ比べます。演奏の表情として拍の伸縮を行うルバートもありますが、単にテンポが乱れることとは区別します。旋律が自由に聞こえるとき、伴奏や大きなフレーズの方向がどう保たれるかが比較点になります。

最後に、長いトリルから右手の回転へ移るところと、低音が復帰するところを続けて聴きます。この二段階を一続きの加速のように聞かせるか、少しずつ景色が戻るように聞かせるかで、回帰の印象は変わります。秒数をそろえるのではなく、同じ音楽上の出来事を比べれば、異なる速度の録音でも比較ができます。

音量や録音環境の差も考慮します。ある録音の低音が大きく聞こえる理由は、奏者の配分だけでなく、マイクの位置や再生機器にあるかもしれません。同じヘッドホンと大きすぎない音量で聴き、気付いたことを「この録音では低音が近く聞こえる」のように書くと、聴いた事実と演奏方法の推測を分けられます。

楽譜は作品番号と原曲・編曲の区別で選ぶ

原曲の構成やリズムを確かめたい場合は、作品64第1番のピアノ独奏譜を選びます。初級向けの編曲は入口として便利ですが、音数や調、部分の省略が原曲と異なることがあります。

「子犬」という親しみやすい題名や、表紙にある難易度だけで選ぶと、この記事の小節の説明と手元の楽譜が合わない場合があります。収録曲名にOp.64-1があるか、ピアノ・ソロか、編曲者の名前や「やさしい」などの表示があるかを順に見ます。歌詞付きの曲や別の楽器用の編曲もあるため、同じ通称だけでは内容を特定できません。

一曲だけ紙で読みたい人には、全音ピアノピース『小犬のワルツ』PP-035が具体的な候補です。出版社の収載曲はOp.64-1で、ISBNは978-4-11-911035-5。複数のショパン作品をまとめて学ぶ曲集とは用途が異なり、まずこの一曲の譜面を手元に置く選び方に向いています。

全音楽譜出版社 全音ピアノピース PP-035 小犬のワルツ

全音楽譜出版社

全音ピアノピース PP-035 小犬のワルツ

▶ 全音楽譜出版社公式サイトで製品情報を見る

¥550

Amazon.co.jp 調べ ・ 2026年11月3日 2:49時点

Amazonで詳細を見る

※価格および在庫状況は変更される場合があります。
※Amazon.co.jpアソシエイトリンクを使用しています。

この記事の小節番号と記号の説明では、ヘンレHN662の公開本文を照合に使っています。紹介カードの全音版と、指番号、スラー(音を滑らかにつなぐ弧の線)、ペダル表示などが全て同じだと保証するものではありません。指番号はどの指で弾くかの提案であり、それが異なるだけで別作品になるわけではないため、まず音符と拍子、構成を確認し、細かな表記は使う版で統一します。

無料で読める古い楽譜を使う場合も、原曲か編曲か、何の版を載せているかが分かるものを選ぶと説明を追いやすくなります。資料を比較して音符や記号を整えた校訂譜の見本や、購入した電子楽譜には配布・利用の条件があります。ここで示した模式図は出版社の譜面の転載ではなく、役割とまとまりを説明するための図として使っています。

構成と拍のメモを譜面に残す

メモは、構成の印と練習の印を分けると読み返しやすくなります。構成用にはA・B・A′と入口、練習用には右手の型の境界や左手の移動先だけを記します。

紙なら違う色を二色までに絞り、初めは第5小節の伴奏開始と第37小節の中央への変化、第77小節の伴奏復帰に印を付けます。次に自分がもつれる箇所だけ別の色で囲めば、曲全体の地図と局所の課題が混ざりません。毎回全ての拍へ書き込むより、見失う入口を選んで残す方が、演奏中に必要な情報を拾いやすくなります。

手元で利用できるPDFや画像の楽譜を整理するなら、EMMU Scoreの取り込み・書き込みの案内も使えます。PDF・画像を取り込んで表示し、書き込みセットを鑑賞用と練習用に分ける方法です。PDFから音符を自動で読み取って演奏する機能とは異なるので、この記事の図や紙の譜面を入れるだけで自動再生できると考えず、読む・印を残す用途として使ってください。

PR · EMMUS運営の楽譜アプリ
EMMU Score
EMMU Score:楽譜を、もっと自由に。読む・書く・音で確認
App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう

子犬のワルツのよくある疑問

作曲者や学年の疑問は、原曲が何を求めるかと分けて整理できます。通称や年齢だけでは、作品の内容と演奏の準備は決まりません。

ショパンの「子犬のワルツ」はどんな曲ですか?

変ニ長調のピアノ独奏曲です。回る主部と歌う中間部が対照を作り、三拍子の伴奏が全体を支えます。

子犬のワルツは小学何年生で弾けますか?

学年だけでは決まりません。原曲には右手の速い動きと左手の跳躍があり、両手の配分や歌い分けも必要です。

「子犬のワルツ」は誰の歌ですか?

原曲はショパン作曲のピアノ独奏曲で、歌詞のある歌ではありません。歌として聴いた場合は編曲版です。

出典・参考資料

情報確認日:2026年11月1日。

楽譜のある毎日に
EMMU Score

楽譜を、もっと自由に。

PDF・画像の楽譜を読み込み、手書きや音楽記号で書き込み。楽譜の作成や、MusicXML形式の楽譜の音を再生して確認することもできます。

App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう

弦楽器のTAB譜の作成にも対応しています。

仲間との音楽・ダンス活動に
EMMU

練習も、連絡も、ひとつに。

練習日程・出欠・演奏曲をまとめて管理。写真・動画・音源・楽譜も、グループの仲間と共有できます。

EMMU:音楽活動とグループの運営をアプリひとつで
App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう