ギターを手に入れて最初にぶつかる壁は、おそらく「コードがきれいに鳴らない」ことです。コードとは、複数の弦を同時に鳴らして作る和音のことを指します。教本の図のとおりに指を置いたつもりなのに、弾いてみるとどこかの音がつぶれてしまいます。開放弦を1本ずつ鳴らせば澄んだ音が出るのに、コードとしてかき鳴らすと、なぜか濁った響きしか出てきません。この段階で「手が小さいからだろうか」「不器用だから向いていないのかも」と感じ始める人は、本当に多いものです。
先に、いちばん大事なことをお伝えします。コードが鳴らない原因は、才能や手の形ではなく、ほとんどの場合フォーム(指と手の使い方)にあります。私自身、始めたばかりの頃は1つのコードを鳴らすだけで精一杯でしたが、原因を1つずつ確かめながら直していくうちに、ある日ふっと音が抜けるように鳴る瞬間がやってきました。この記事では、まず「鳴らない原因」を種明かしし、基本コードの覚え方から、多くの人が挫折するFコードの壁の越え方まで、順を追って解説していきます。

この記事では、ギターコードの押さえ方を厳選してご紹介します。
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結論:鳴らないのはセンスではなく「フォーム」の問題
初心者のうちにコードが鳴らない原因は、突き詰めるとほぼ3つに絞られます。3つとも、今日の練習からすぐに意識できる具体的なポイントです。裏を返せば、この3つさえ意識して直せれば、あとは指が慣れていくのを待つだけでよいのです。

原因①:指が寝ていて、隣の弦に触れている
もっとも多い原因がこれです。指の腹でべたっと弦を押さえると、指のどこかが隣の弦にわずかに触れて、その振動を止めてしまいます。つまり鳴っていないのは、押さえている弦ではなく、隣の弦であることが多いのです。直し方の詳細は、次章の「指のセット」でお話しします。
原因②:押さえる位置がフレットから遠い
フレットとは、ギターの指板(ネック表面の板)に打ち込まれている金属の棒のことです。弦を押さえるベストな位置は、目指すフレットのすぐ手前で、そこから遠ざかるほど強い力が必要になり、音もビリビリとにごりやすくなります。かといってフレットの真上に指を乗せると、今度は音が詰まってしまいます。狙いはあくまで「真上ではなく、すぐ手前」です。位置がほんの少し変わるだけで、同じ力でも音の鳴り方がはっきりと変わります。慣れないうちは、音を出すたびに指の位置を目で確かめる習慣をつけると、修正の速度がぐんと上がります。
原因③:力の向きが違う(握りつぶそうとしている)
音が鳴らないと、人はつい力任せにネックを握り込みたくなります。けれども必要なのは力の強さではなく、力の向きです。手のひら全体で握りつぶすのではなく、指先から指板に向かってまっすぐ押し込むイメージを持ってみてください。向きが合っていれば、思っているよりずっと軽い力で音は鳴ってくれます。逆に、向きがずれたまま力むと手全体がすぐに疲れてしまい、指を痛める原因にもなりかねません。
実際の「鳴らない」は、この3つが組み合わさって起きていることがほとんどです。だからこそ、やみくもに回数だけ弾くのではなく、自分がどの原因に当てはまっているのかをたしかめながら直していくことが、遠回りに見えていちばんの近道になります。焦って新しいコードへ手を広げる前に、いま取り組んでいる1つを丁寧に鳴らすほうが、結果として先へ進む速度は上がるはずです。フォームが正しい方向を向いてさえいれば、あとは時間が味方になってくれます。
そして、手の大きさや指の長さを理由に諦める必要はありません。体格に合わせた指の使い方の工夫は確かにありますが、それが決定的な壁になることはまずないと考えて大丈夫です。手の小さい人も指の短い人も、世界中でたくさんの人がギターを楽しんでいます。どうしても弾きにくさが消えない場合は、弦の高さなど楽器側の状態が関係していることもありますが、それを考えるのはフォームを整えたあとで十分です。
この記事の読み進め方
ここから先は、次の順番でお話ししていきます。
- ギターの構え方と手の形、コード表(ダイアグラム)の読み方
- 最初に覚えたい基本コードの順番と、つまずきやすいポイント
- Fコードの壁の正体と、無理なく越えるための選択肢
- コードチェンジのコツと練習法、指の痛みとの付き合い方
- よくある質問と、この記事のまとめ
気になる章から読んでいただいても構いません。ただ、いままさに「鳴らない」と悩んでいる人は、まず次章の構え方から確認するのがおすすめです。土台が整うと、その先の内容の吸収が驚くほど早くなります。
押さえる前の基本|構え方とコード表の読み方
コードの練習に入る前に、少しだけ準備の話から始めます。テーマは三つ、ギターの構え方と左手の指の形、そしてコード表の読み方です。音がきれいに鳴らない原因の多くは、実は弦を押さえる前の段階にすでに潜んでいます。この土台があいまいなまま反復しても、指はなかなか正しい形を覚えてくれません。逆に、ここが整っているだけで、同じ練習時間でも音の変わり方がはっきり違ってきます。

構え方と親指の位置
まずは座り方からです。椅子に浅めに腰かけて、ギターのくびれた部分を右足のももに乗せ、ボディを軽く体に引き寄せます。このとき、左手を離してもギターが落ちない状態になっているのが理想です。楽器が安定していないと、左手はネックを支える仕事まで受け持つことになり、コードを押さえる余力がなくなってしまいます。楽器の重さは体と右腕で受け止めて、左手には押さえる仕事だけを任せましょう。立って弾く場合も考え方は同じで、ストラップの長さを調整して、体と楽器が安定してつながる位置を探します。
次に親指です。ネック(左手で持つ細長い棹の部分)をぎゅっと握り込むのではなく、親指の腹をネックの裏側に軽く添えるのが基本の形になります。親指と他の四本で軽く挟むイメージを持てると、指が指板の上で自由に動けるようになります。また、左の脇をきつく締めすぎると手首が窮屈になって指を立てにくくなるため、腕全体はゆったりと構えてください。私自身、始めたばかりの頃はネックを棒のように握り込む癖があり、親指を裏側に添え直しただけで音の分離が変わった経験があります。なお、手が小さい方や指が短い方は、ネックをやや立て気味に構えたり、親指の位置を低めに調整したりすると、指の届き方が大きく変わります。
指のセット|指を立てて指先で押さえる
左手の指は寝かせず、しっかり立てて、先端のいちばん硬いところで弦をとらえます。腹で触れてしまうと、狙った弦の隣にうっすら当たって、その音が消えたり濁ったりするからです。手のひらとネックの間に小さな空間を残すつもりで、指の関節を軽く曲げてアーチを作るのがコツになります。
ここで見落とされがちなのが爪の長さです。爪が伸びていると、どれだけ意識しても指は立てられません。先に爪が指板に当たってしまい、指先で押さえる形が物理的に作れなくなるためです。左手の爪を短く整えるところまでが練習の準備だと考えると、忘れにくくなります。
押さえる場所は、前章の原因②でお話ししたとおり、フレットのすぐ手前のきわを狙うのが原則です。きわの近くなら軽い力でも音がすっと決まり、指先への負担も小さくて済みます。
コードは力ではなく、場所で鳴らすものです。位置さえ合えば、小さな力でもきちんと響いてくれます。
コード表(ダイアグラム)の読み方
ギターのコードは、コード表(ダイアグラム)と呼ばれる図で示されるのが一般的です。縦横の線と印だけの簡単な図で、基本の読み方は次のとおりです。
- 縦の線は六本の弦を表し、向かって右端がいちばん細い1弦にあたります。
- 横の線はフレットを表し、いちばん上がヘッドに近い側です。
- 丸印が付いた場所が、指で押さえるポイントです。
- ×印の弦は鳴らさない弦なので、その弦の音が出ないように扱います。
- ○印は開放弦、つまり何も押さえずにそのまま鳴らしてよい弦のことです。
- 丸印に数字が添えられている場合は、使う指の番号(人差し指が1、小指が4)を示しています。
この記事では、「人差し指は何弦の何フレット」といった細かい指配置を、文章で一つずつ羅列することはしません。文字で位置を追いかけるより、コード表を手元に置いて、図と自分の指を見比べながら確かめるほうが、ずっと早く正確に覚えられるからです。この後の章でも、言葉でお伝えするのは原則とつまずきやすいポイントまでにとどめ、細かい配置はコード表で確認しながら進めていきます。
最後に、練習前の習慣をひとつだけお願いします。弾き始める前に、毎回チューニングを合わせてください。音程がずれたままだと、正しく押さえられていても和音は濁って聞こえます。その状態で練習を続けると、「自分の指が悪いのかもしれない」と、存在しない原因を探し続けることになりかねません。弦は温度や湿度でも少しずつ音程が動くので、昨日合わせたから大丈夫と考えず、その日の弾き始めにそろえ直すのが確実です。音の物差しを先に整えることが、自分の上達を正しく確かめる第一歩になります。
最初に覚える基本コード|やさしい順に攻める
フォームの原則がわかったら、いよいよ実際のコードに挑戦します。ここで大切なのは、難しい形に根性で挑むのではなく、鳴らしやすい形から順番に小さな達成感を積み重ねていくことです。最初の1音がきれいに響いた瞬間から、練習は一気に楽しくなります。この章では、覚える順番の目安、つまずきやすい代表例、そして鳴らないときに自分で原因を見つける手順の3つを順にお伝えします。

覚える順番の提案|Emから始めて少しずつ広げる
最初の1つには、Emをおすすめします。使う指が2本だけで、残りは開放弦(指で押さえず、そのまま鳴らしてよい弦)ですから、多少形が崩れていてもそれらしく豊かに響いてくれるのです。そこからAm、Dmと指の配置がコンパクトな形を経由して、C、G、D、E、Aへと広げていくと無理がありません。指が1本増えるごとに、隣の弦へうっかり触れてしまう場面も増えますから、少ない本数のうちに成功のコツをつかんでおくと、あとに続く形の習得がぐっと楽になります。細かい指の配置は、コード表(ダイアグラム)で確認しながら進めてください。
ただし、この順番はあくまで一例です。弾きたい曲がすでにあるなら、その曲に出てくるコードから覚えるのも立派な正解と言えます。目標の曲があると練習の目的がはっきりしますし、「この形はあの曲のあの場面で使う」と結びついた記憶は忘れにくいものです。順番どおりに進むことよりも、1つひとつの形に手がなじむまで付き合うことのほうが、ずっと重要だと考えてください。また、一度にすべてを覚えようとする必要はありません。1日に向き合う形を1つか2つに絞り、その形と丁寧に付き合うほうが、指の記憶として残りやすくなります。
つまずきやすいポイントを先に知っておく
基本コードには、それぞれ初心者がひっかかりやすい場所があります。しかも、その場所は人によってばらばらではなく、かなり共通しています。先に知っておけば、鳴らないときに原因を探す時間を大きく減らせるはずです。同じ場所で足踏みしているのは、あなただけではないのです。
- Cは、薬指の付け根あたりが1弦にそっと触れてしまい、いちばん高い音だけが消えがちです。手のひらをネックから少し離し、指の角度を垂直に近づけていくと改善に向かいます。
- Gは、小指を使う形に慣れが必要です。日常生活でほとんど単独では動かさない指ですから、最初は言うことを聞かなくて当然だと思ってください。
- Dは、3本の指が狭い場所に集まる形です。指同士がぶつかって寝てしまいやすいため、指を立てる意識がほかのコードより一段と大事になります。
どれも根本をたどれば、前の章でお話しした「指が寝ている」「位置がフレットから遠い」という原因に行き着きます。新しい失敗が次々に現れているわけではなく、同じ原因が形を変えて顔を出しているだけだと捉えると、気持ちはずいぶん軽くなります。
鳴らないときは1本ずつ弾いて原因の弦を特定する
ここが、この記事でいちばん実用的な部分です。コードを押さえたまま、6本の弦を低いほうから1本ずつ、ゆっくり弾いてみてください。きれいに響く弦と、詰まったり濁ったりする弦が、驚くほどはっきり分かれます。急がずに1本ごとの音の輪郭を聴き取ること自体が、耳を育てる練習にもなります。
濁った弦が見つかったら、疑う順番は2つだけです。まず、隣の指がその弦に触れていないかを確かめます。押さえている指そのものではなく、隣の指の腹や付け根が原因になっていることが非常に多いのです。次に、押さえている位置がフレットから遠すぎないかを確認します。指を大きく動かす必要はなく、ほんの少し角度や位置を変えるだけで濁りが消えることもよくありますから、この2つを順番に試してみてください。1か所直せたら、もう一度6本を通して弾き、ほかの弦に新しい濁りが出ていないかも確かめておくと仕上がりが安定します。
逆にやってはいけないのが、全部の弦をまとめてジャーンと弾いては、なんとなく全体を押さえ直す、という繰り返しです。どこが悪いのかわからないまま回数だけが増えていくので、なかなか改善につながりません。濁った弦を特定して、1か所ずつ直していくほうが、遠回りに見えて結果的にずっと早く前へ進みやすくなります。私自身、この確認方法を身につけてから、鳴らない悩みの多くが短時間で片づくようになりました。
最初のうちは、形を作るだけで精一杯に感じて当然です。すべての弦がそろって鳴らなくても、落ち込む必要はありません。昨日より濁りが1本減ったなら、それは確かな前進ですし、きれいに鳴った1つの音の記憶が、次の練習へ向かう何よりの意欲になってくれます。うまくいかない日があっても、原因を1つずつ見つけて直す姿勢さえ続けていれば、手は少しずつ動きを覚えていきます。焦らず、今日の1つを大切にしてください。
Fコードの壁|正面から越えなくてもいい
基本のコードに少し慣れたころ、曲の途中に突然あらわれて初心者の行く手をふさぐのがFです。ここで挫折したという話は昔からよく聞かれますが、先に結論をお伝えすると、Fの壁は正面から越えなくても構いません。越え方は一つではなく、回り道もまた立派な道だからです。この章では、難しさの正体と攻略のコツ、そして正面突破しない選択肢までまとめてお話しします。

なぜFは難しいのか
C・G・Emといったコードは、指1本につき弦1本を担当すれば形になりました。ところがFでは、人差し指1本で複数の弦をまとめて押さえる「セーハ(バレー)」という技術が求められます。1本の指で何本もの弦に均等な力をかける動きは、日常生活にはほとんど存在しません。最初はうまくいかなくて当然なのです。
指の関節のくぼみに弦が入り込んで音が消えたり、力いっぱい握っているのに低音側だけ詰まった音になったりと、これまでのコードとは別種の難しさがあります。ただ、Fが挫折の代名詞のように語られるのは、それだけ多くの人が同じ場所でつまずいてきた証拠でもあり、コツも回り道も先人がたくさん残してくれています。始めたばかりの段階で完璧に鳴らせる人のほうが珍しく、最初は数本の弦しか鳴らないほうがむしろ普通です。
Fが鳴らないのは、手が小さいからでも不器用だからでもありません。手がまだこの動きを覚えていないだけなので、焦らずにいきましょう。
攻略のコツ
そのうえで挑戦してみたい人のために、私自身が長い試行錯誤の末にたどり着いたポイントを挙げます。細かい指の配置はコード表(ダイアグラム)で確認しながら、次の4点を意識してみてください。一度に全部を直せなくても、どれか一つを変えるだけで音がはっきり変わることはよくあります。
- 人差し指はやや外側の面を使う:腹を正面からまっすぐ当てると、関節のくぼみに弦がはまって音が途切れがちです。指をわずかに回し、親指側の側面にある硬い部分を弦に当てる意識を持つと、均等に力が伝わりやすくなります。
- 親指はネック裏で挟むように支える:人差し指と親指でネックを前後から挟むイメージを持つと、握力だけに頼らずに済みます。
- 肘を体に近づける:脇を軽く締めて肘を体側へ寄せると、腕全体の重みが指先に乗り、力の方向が整うのを感じられるはずです。
- フレットのすぐそばに指を置く:人差し指全体をフレット寄りに置くと、少ない力でも音が出やすくなります。ほかのコードと同じ原則ですが、セーハではとくに違いを実感しやすい部分です。
そしてもうひとつ大切なのは、合格ラインを下げておくことです。6本の弦がすべて鳴らなくても、まず中指・薬指・小指で押さえる真ん中の3〜5弦がきれいに鳴れば十分に前進しています。セーハの人差し指が受け持つ1・2弦や6弦は、いちばん最後に育つ部分です。完璧なFは、ある日突然完成するものではなく、鳴る弦が1本ずつ増えるかたちで近づいてくるものです。今日は2本、次は3本と数えられるようになれば、それで順調だといえます。気長に付き合っていきましょう。
正面突破しない3つの道
とはいえ、Fが完成するまで曲の練習そのものを止めてしまうのはもったいない話です。コードは曲の中で使ってこそ手になじんでいきますから、正面から挑む以外の道も並行して用意しておく価値があります。次の3つの道です。
- ①簡易フォームから始める:セーハを省略した省略形のFがあり、押さえる弦を減らした形なら、これまでと同じ感覚で音を出せます。まず省略形で曲を通し、余裕が出てから本来の形へ育てていく進め方は、遠回りに見えて実は近道になりやすいのです。
- ②カポタストを使う:カポタストとは、ネックに挟んで曲全体の音の高さを変えられる小さな道具のことです。カポを付けると、難しいコードが並ぶ曲を、やさしい押さえ方の並びに置き換えられる場合があります。仕組みはあとから知れば足りるので、「やさしい押さえ方のまま同じ曲を楽しめる道具」と覚えておけば十分です。
- ③いったん後回しにして他の曲を楽しむ:世の中にはFの出てこない曲もたくさんあります。ほかのコードの曲で指と耳を育ててから戻ってくると、あれほど高く見えた壁が思いのほか低くなっていた、ということは珍しくありません。戻ってきたときのあなたの指は、以前より確実に育っています。
どの道を選んでも「逃げ」ではありません。楽しく続けること自体が上達のいちばんの土台ですから、気持ちが離れそうになったら迷わず迂回してください。それは撤退ではなく、今のあなたに合った合理的な作戦です。壁のこちら側で曲を楽しんでいるうちに、越えるための足場は自然と積み上がっていきます。
コードチェンジと毎日の練習法|曲がいちばんの先生
コードが1つずつ鳴るようになってきたら、次の段階はコードチェンジです。1つずつなら押さえられるのに、切り替えた瞬間に音が濁ってしまうという悩みは、誰もが通る道だと考えてください。この章では、コードチェンジの練習方法と、毎日の練習を続けるための工夫、そして避けて通れない指の痛みとの付き合い方をまとめます。

コードチェンジは「2つをゆっくり往復」が基本です
コードチェンジの練習は、2つのコードをゆっくり往復するところから始めましょう。おすすめはEmとAmのように、使う指の本数が少なくて形も近い組み合わせです。EmからAmへ、AmからEmへと何度も行き来するうちに、手が移動の道筋を覚えていきます。切り替えたら右手でジャランと鳴らして、音がきれいに出ているかまで確かめる流れを1セットにすると効果的です。
このときのテンポは、「切り替えでつっかえない速さ」まで思い切って落としてください。速く弾いてつっかえるより、遅くても止まらずに切り替えられるほうが、結果として上達の近道になります。つっかえたままテンポだけ上げても、つっかえる癖ごと速くなってしまうからです。
もう1つ意識したいのは、指の移動距離を減らすことです。2つのコードの間で共通して使う指や、近い位置へずらすだけで済む指があれば、それを軸にして先に動かしてみてください。全部の指をいったん離してゼロから作り直すより、動きがずっと小さくなります。コード表を見比べて「この指はほとんど動かなくていい」という発見をしておくと、切り替えは一気に楽になります。
曲で練習すると長続きします
基礎練習の往復だけでは、正直なところ飽きてしまいます。そこでおすすめしたいのが、2〜3個のコードで弾ける簡単な曲を1曲決めて、それを目標にする方法です。曲には基礎練習にはない「弾けたときの喜び」があり、これが練習を続けるいちばんの燃料になります。たとえ短い曲でも、最後まで通して弾けたという経験は、その後の練習を支える大きな自信になるはずです。
具体的には、「コード2〜3個で弾ける曲」「初心者向け簡単なコード進行の曲」といった言葉で検索すると、候補がたくさん見つかります。その中から、自分がよく知っていて口ずさめる曲を選んでください。頭の中でメロディが流れる曲のほうがリズムに乗りやすく、間違いにも気づきやすくなります。私自身、初めて1曲を通して弾けた日のことは今でも覚えていて、あのときの達成感が、その後も練習を続ける何よりの後押しになりました。
指の痛みとは無理せず付き合いましょう
始めたての時期に指先がひりひりと痛むのは、皮膚が弦に慣れていく過程で多くの人が経験することです。続けるうちに指先が少しずつ丈夫になり、痛みは自然と気にならなくなっていきます。だからこの段階の痛み自体は、心配しすぎなくて大丈夫です。
この時期の練習は「短時間をこまめに」が基本です。1回の練習を短めに区切り、指先を休ませながら回数を重ねるほうが、一度に長時間頑張るよりも指への負担を抑えられます。
ただし、注意してほしいことがあります。水ぶくれができたり、練習をやめても強い痛みが引かなかったりするときは、無理をせず数日休んでください。痛みを我慢して長時間弾き続けても、良いことは何もありません。
強い痛みは体からの「休め」のサインです。休んでいる間に皮膚は回復しますし、数日ギターから離れたくらいで、それまでの積み重ねが消えることはありません。
続けるための小さな工夫
最後に、練習を習慣にするための工夫をいくつか紹介します。どれもささやかなことですが、続くかどうかを大きく左右するものです。
- 1日10分でもギターに触る:週に1回まとめて長く練習するより、短くても毎日触るほうが、指は形を覚えやすくなります。
- ケースにしまわず、スタンドに出しておく:「出すのが面倒」という小さなハードルが消えるだけで、手に取る回数は自然と増えるはずです。
- 録音や動画で自分の変化を残す:毎日弾いていると上達は実感しにくいものですが、少し前の自分の演奏を聞き返すと、変化にはっきり気づけます。
コードチェンジは、頭で考えて指を動かす段階から、考えなくても手が勝手に動く段階へと、少しずつ移っていくものです。その速さには個人差がありますが、毎日少しでも触れていれば、方向としては着実に前へ進んでいけます。調子が出ない日は、チューニングをして数回鳴らすだけでも構いません。ゼロの日をつくらないことが、続けるうえで何よりの支えになります。焦らず、好きな曲をいちばんの先生にして続けていきましょう。
🎵 バンドを組んだら。運営がラクになる無料アプリ「EMMU」
練習日程の調整、コード譜・音源の共有、メンバー連絡をまとめて管理。これからバンドを始める人にもぴったりです。
ギターコードでよくある質問
最後の章では、初心者の方からよくいただく質問をQ&A形式でまとめました。同じところでつまずく人はとても多く、悩んでいるのはあなただけではありません。ここまでの内容と重なる部分は、それぞれの章をあわせて読み返していただくと理解が深まりますし、気になる質問だけを拾い読みしていただく形でも大丈夫です。
Q1. 指が短い・手が小さいのですが、ギターは弾けますか?
はい、弾けます。指の長さや手の大きさそのものより、ネックの角度や親指の位置といった構え方の工夫のほうが、指の届き方をずっと大きく変えてくれます。実際、手が小さくても自分に合う構え方を見つけて、気持ちよくコードを鳴らしている人は少なくありません。体格に合わせた工夫のポイントは構え方と手の形の章で解説していますので、届かないと感じたら、まずそちらから見直すのがおすすめです。
Q2. 指先の痛みはいつまで続きますか?
個人差はありますが、ヒリヒリする程度なら皮膚が弦に慣れていく途中の自然な反応で、多くの人はだんだん楽になっていきます。一方、ズキズキと響く強い痛みやしびれは休むサインですから、我慢せず練習を中断してください。無理のない練習時間の考え方は、コードチェンジと練習法の章で詳しく紹介しています。
Q3. アコギとエレキ、どちらがコードを押さえやすいですか?
一般に、エレキギターは細めの弦が張られていることが多く、アコースティックギターに比べて少ない力で音を出しやすいと言われています。とはいえ、押さえやすさだけで楽器を選ぶより、自分が弾きたい音楽に合う一本を選ぶほうが、長く続ける原動力になるはずです。指を立てる・フレットの近くを押さえるというこの記事の原則は、どちらのギターにもそのまま当てはまります。どちらを選んだとしても原則は変わりませんから、手元にある一本で、今日の練習から始めていきましょう。
Q4. Fコードがどうしても弾けず、挫折しそうです
その悩みは、ほとんどの初心者が一度は抱えるものです。Fコードの壁は正面から越えなくてもよく、セーハを省いた簡易フォーム・カポタスト・後回しという3つの道のどれを選んでも正解だと、Fコードの章でお伝えしました。実際、Fを保留にしたまま、EmやAmといった鳴らしやすいコードを中心に何曲も楽しんでいる人はたくさんいます。弾ける曲が増えて指が育ったころに戻ってくると、あのとき高く見えた壁が思ったより低くなっていることに、きっと気づけるでしょう。
まとめ|きれいに鳴らない日々は、全員が通った道
最後に、この記事でお伝えしてきたことを4つのポイントに絞って振り返ります。細かいことをすべて覚えておく必要はありません。コードがうまく鳴らずに迷ったら、いつでもこの4つに立ち返ってみましょう。

- 鳴らないときは、まず3つの原因を疑ってみてください。 指が寝ていないか、押さえている場所がフレットから遠くないか、力の方向がずれていないかを、この順番で確かめると原因にたどり着きやすくなります。
- 音が濁ったら、弦を1本ずつ鳴らして確認しましょう。 基本コードの章で紹介したように、低いほうの弦から順にゆっくり鳴らしてどの弦が詰まっているのかを特定できれば、直すべき場所がはっきり見えてきます。
- Fコードは迂回してもかまいません。 簡易フォーム・カポタスト・後回しという3つの道はどれを選んでも間違いではなく、遠回りに見えて、結局は長く楽しむための近道になります。
- 長時間の特訓より、短い時間を毎日積み重ねるほうが指は育ちます。 強い痛みが出た日は思い切って休むことも、遠回りではなく大切な上達の一部です。
今日、思うようにコードが鳴らなくても、落ち込む必要はありません。きれいに鳴らない日々は、いま気持ちよさそうにギターを弾いているすべての人が、かつて同じように通ってきた道です。上達の速さには個人差がありますから、誰かと比べて焦る必要はありません。昨日より少しでも濁りが減っていれば、それはもう立派な前進です。この記事で紹介した原則を頭の片隅に置きながら、毎日少しずつギターに触れていると、ある日ふっと、澄んだ音がひとまとまりに響く瞬間がやってくるはずです。私自身、初めてコードがきれいに鳴った日の嬉しさは、いまでもはっきり思い出せます。その最初の一音の気持ちよさを楽しみに、今日もギターを手に取ってみてください。


