雅楽とは?使う楽器・歴史と管絃・舞楽・歌謡の違い

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ミュージック

雅楽(ががく)は、日本古来の歌舞と大陸から伝わった音楽が重なり、宮廷を中心に育まれた芸能です。管絃・舞楽・歌謡の違いを、使う楽器と舞台の具体例から見分けます。

笙の長い響き、篳篥の曲がるような旋律、色鮮やかな装束の舞。どれも雅楽の一面ですが、いつも同じ楽器が並び、必ず舞うわけではありません。まず「どこから来た音楽か」と「どのように演じるか」を分けると、公演案内に並ぶ難しい名前を読みやすくなります。

雅楽を分類する二つの軸
  1. 雅楽とは|来歴と演奏形式を分けると全体がわかる
    1. 日本で形づくられた音楽であり、渡来曲の保存だけではない
  2. 管絃・舞楽・歌謡の違い|舞と歌の有無で入口を選ぶ
    1. 管絃は三管両絃三鼓の音を重ねる
    2. 舞楽は舞人の人数・装束・動きも作品の情報になる
    3. 歌謡では「何を歌うか」と伴奏の違いを見る
  3. 雅楽の楽器|音色より先に役割を整理する
    1. 篳篥は二枚のリードで鳴り、塩梅で音を動かす
    2. 笙は吸っても吹いても鳴り、和音と単音を使い分ける
    3. 龍笛・高麗笛・神楽笛は使われる場面が違う
    4. 楽琵琶と楽箏は音を埋め続けず、節目を響かせる
    5. 鞨鼓・太鼓・鉦鼓は同じ打楽器でも仕事が違う
  4. 舞楽の左舞・右舞|唐楽と高麗楽を編成で比べる
    1. 番舞は左右の演目を組にして味わうしくみ
  5. 歌謡の種類|催馬楽・朗詠と国風歌舞
    1. 催馬楽と朗詠は歌詞の出どころと拍の扱いが異なる
    2. 国風歌舞は在来の歌舞を基にしながら変化してきた
  6. 雅楽の歴史|伝来・日本での再編・近代の継承
    1. 平安時代には作曲・編曲と新しい楽しみ方が生まれた
    2. 戦乱の危機を支えた奈良・大阪の伝承
    3. 明治撰定譜は複数の伝承を整理した楽譜集
    4. 宮内庁だけでなく寺社や民間団体も雅楽を伝える
  7. 雅楽の音楽を聴く手掛かり|調子・拍・唱歌
    1. 調子は曲名と別に記され、越天楽にも複数の調子がある
    2. 遅く聞こえる音楽にも拍のまとまりと進行がある
    3. 唱歌は声で旋律と奏法を身に付ける伝承方法
  8. 初めて聴く曲と公演案内の読み方
    1. 越天楽と陵王では注目する対象が変わる
    2. 曲名・形式・系統・出演者の順に読む
    3. 楽器の写真と音を結び付けるなら『雅楽のひみつ新版』
  9. 雅楽についてよくある質問
    1. 「雅楽」の読み方は?
    2. 雅楽で有名な曲は?
    3. 雅楽はどんな音楽ですか?
    4. 伎楽と雅楽の違いは何ですか?
  10. 出典・参考資料

雅楽とは|来歴と演奏形式を分けると全体がわかる

雅楽には、音楽が伝わり育った系統による分類と、歌・舞・楽器をどう組み合わせるかによる分類があります。唐楽と管絃、国風歌舞と歌謡は、同じ基準で並べた名前ではありません。

たとえば「唐楽の越天楽(えてんらく)を管絃で演奏する」という説明では、唐楽が音楽の系統、管絃が演奏形式です。「唐楽か管絃か」の二択ではなく、同じ演奏を別の角度から説明しています。ジャンル名の下に演奏方法が一つだけある、と考えないことが最初のポイントです。

分類の軸 主な名前 何がわかるか
来歴・系統 国風歌舞/唐楽・高麗楽/催馬楽・朗詠など 日本古来の歌舞、渡来した楽舞、平安時代に育った歌物という背景
演奏形式 管絃/舞楽/歌謡 楽器の合奏を聴くか、舞を伴うか、歌を中心に聴くか

国風歌舞は「くにぶりのうたまい」、唐楽は「とうがく」、高麗楽は「こまがく」と読みます。高麗楽を「こうらいがく」と読んでしまうと、公演の音声解説と結び付けにくくなります。最初から漢字を全部覚えるより、プログラムの名前に読みを添えておくと役立ちます。

日本で形づくられた音楽であり、渡来曲の保存だけではない

現在の日本の雅楽は、大陸の音楽をそのまま保存したものではなく、日本で楽曲や楽器編成を整えながら受け継いできたものです。日本古来の歌舞も、渡来した音楽の影響を受けています。

宮内庁の説明では、大陸からの音楽の伝来は5世紀頃から始まり、現在につながる雅楽は10世紀頃に完成したとされます。この二つの年代は「最初に伝わった時期」と「日本で体系が整った時期」を示しており、矛盾しません。長い歴史を一つの創立年に置き換えると、その間の交流や創作が見えなくなります。

また「雅楽」という漢字は、日本以外の宮廷音楽を論じるときにも現れます。中国や朝鮮半島などの音楽と歴史上の関係はありますが、同じ名称なら現代の曲目や楽器も同じ、という意味ではありません。この記事では、日本の公演で管絃・舞楽・歌謡として紹介される雅楽を対象にしています。

管絃・舞楽・歌謡の違い|舞と歌の有無で入口を選ぶ

管絃は楽器による合奏、舞楽は舞を伴う演奏、歌謡は歌を中心とした表現です。音色を聴きたい、舞を見たい、言葉と節回しを聴きたいという目的に合わせて、公演の種目を選べます。

管絃・舞楽・歌謡の三形式
形式 舞台の中心 編成を見る手掛かり 最初に注目するもの
管絃(かんげん) 歌や舞を伴わない器楽合奏 管楽器・絃楽器・打楽器 管の旋律と、絃や打物が示す節目
舞楽(ぶがく) 音楽と舞 主に管楽器と打楽器。左右で違う 舞人の動きと音楽の進み方
歌謡(かよう) 歌詞と歌声 歌の種類で楽器が変わる 言葉の伸ばし方と伴奏の応答

これは鑑賞の入口としての整理です。国風歌舞のように歌と舞が結び付くものもあるため、実際の芸能を「歌だけ」「舞だけ」の箱へ完全に分ける表ではありません。公演に複数の種目がある場合も、全体を一つの形式に決める必要はなく、各演目の欄を読みます。

管絃は三管両絃三鼓の音を重ねる

管絃の基本となる「三管両絃三鼓」は、三種類の管楽器、二種類の絃楽器、三種類の打楽器を表します。合計八人で演奏する、という人数の指定ではありません。

三管は笙・篳篥・龍笛、両絃は楽琵琶・楽箏、三鼓は鞨鼓・太鼓・鉦鼓です。同じ種類の管楽器を複数人で担当することもあります。

管絃では、旋律が長く伸びる間にも、絃楽器の短い響きや打楽器の間隔が音楽のまとまりを作ります。全ての楽器が同じ旋律を同時に吹き始める合奏を想像するより、違う役割の音が順に加わるものとして聴くと、音の層を追いやすくなります。

現在の管絃で中心となるのは唐楽です。同じ曲が舞楽として演じられる場合には、絃楽器を用いないなどの編成の違いがあり、演奏の速さや曲の扱いも同一とは限りません。「同じ曲名の録音なのに印象が違う」と感じたら、演奏形式の欄が比較の手掛かりになります。

舞楽は舞人の人数・装束・動きも作品の情報になる

舞楽では、楽器の響きに加えて、舞人の配置や動き、装束、面が作品を形づくります。音源だけでは得られない、舞台上の位置や動きの変化に注目できます。

一人で舞う演目も、複数人で隊形を作る演目もあります。人数の多い舞を大人数の独舞の集まりとして見るより、向きや間隔がどうそろい、いつ形が変わるかを見ると、群舞としての構成を追えます。独舞では、一人の身振りや持つ道具がより目立つ観察対象になります。

面は舞楽全体の必需品ではありません。面を着ける演目と着けない演目があるため、面がないから雅楽ではない、と判断しないようにします。装束も舞の種類によって変わります。演目解説の名前と、舞台で見える面や道具を照らし合わせると、作品ごとの姿を覚えやすくなります。

歌謡では「何を歌うか」と伴奏の違いを見る

雅楽の歌謡には、日本古来の歌舞に属する歌や、平安時代に育った催馬楽・朗詠があります。歌詞の成り立ちと伴奏の違いを知ると、器楽合奏とは別の聴きどころが見えます。

歌謡という言葉を、近現代の流行歌を指す「歌謡曲」と同じ意味で読むと混乱します。ここでは声による雅楽の表現を広く指しています。一方、雅楽の説明で「歌物」と狭く分類する場合は、催馬楽と朗詠を指すことがあるため、資料ごとの分類の軸を読む必要があります。

長い音の途中では、歌詞の一文字が長く引き伸ばされることがあります。日常会話と同じ速さで言葉を聞き取ろうとするより、歌い出し、声がそろう箇所、管楽器が支える箇所に耳を向けると、言葉を完全に読めなくても演奏の構造を感じ取れます。歌詞や大意が配られる公演なら、曲名と合わせて先に読むと内容をたどる助けになります。

雅楽の楽器|音色より先に役割を整理する

管絃の楽器は、篳篥と龍笛の旋律、笙の持続する響き、絃と打物の節目を組み合わせて聴けます。形の似た管楽器も、吹き方と合奏中の仕事を分けると見分けやすくなります。

管絃の楽器と役割
楽器 読み 管絃で注目する役割・特徴
篳篥 ひちりき 主旋律と、音の高さが滑らかに変わる表現
龍笛 りゅうてき 横笛の旋律。合奏の出だしを導く働き
笙 しょう 複数の音を重ねて長く響かせる
楽琵琶・楽箏 がくびわ・がくそう 絃をはじいた短い音で拍や流れの節目を示す
鞨鼓 かっこ 打ち方と合図で合奏を先導する
太鼓・鉦鼓 たいこ・しょうこ 異なる音色で拍のまとまりを示す

「笛・琴・太鼓」と大きくまとめるだけでは、横笛と縦に構える篳篥、絃をはじく箏と管を束ねた笙の違いが消えてしまいます。舞台を見るときは、構え方と鳴らし方を手掛かりにし、音源だけのときは、伸びる音と短く消える音の組合せから探すと対応を付けやすくなります。

篳篥は二枚のリードで鳴り、塩梅で音を動かす

篳篥は、二枚の薄い振動片を合わせたリードを使う管楽器です。「塩梅(えんばい)」と呼ばれる、息や口の加減によって音の高さを動かす表現が特徴の一つです。

リードとは、息を受けて振動し音を生む部分です。篳篥は横笛のように管の縁へ息を当てる楽器ではないため、形が小さくても音の性格は大きく異なります。同じ指使いを保ったまま音の高さを変えられるので、指の動きだけを見て旋律を推測しても、実際の音の変化と一致しないことがあります。

管絃の演奏では、笛が先に奏し、篳篥が加わる「付所(つけどころ)」が聴く目印になります。篳篥の入りによって主旋律がはっきりしてくる関係を探すと、長い響きの中にも展開を見つけられます。音が揺れることを、音程が合っていないという一つの尺度だけで判断せず、その表現の方法として受け取る視点が役立ちます。

笙は吸っても吹いても鳴り、和音と単音を使い分ける

笙は竹管を束ねた形の管楽器で、息を吸うときにも吹くときにも音を出せます。管絃では「合竹(あいたけ)」という複数の音の重なりが特徴ですが、歌物では単音を奏する「一竹(いっちく)」も使います。

笙には17本の竹管がありますが、一般的な笙で発音する管は15本です。したがって、見える管の数と一度に鳴る音の数は同じではありません。合竹も17音全部を同時に出すのではなく、五つや六つの音を組み合わせます。形の華やかさだけでなく、どのように音を重ねる楽器なのかまで分けると理解しやすくなります。

内部の金属の振動片が鳴るしくみで、呼吸の向きが変わっても長い響きを保てます。奏者が笙を温める様子は、演出ではなく、息による湿気で発音しにくくなることへの対処に関係します。

龍笛・高麗笛・神楽笛は使われる場面が違う

雅楽の横笛には龍笛・高麗笛・神楽笛があり、曲の系統や種目によって使い分けます。舞台に横笛があるというだけでは、すべて龍笛とは言い切れません。

龍笛は唐楽、高麗笛(こまぶえ)は高麗楽、神楽笛(かぐらぶえ)は神楽歌の演奏で見ることができます。高麗笛は東遊にも用いられるため、楽器と系統が常に一対一になる表ではありません。公演案内に「東遊」とあれば、笛の音だけで唐楽と決めず、その歌舞の編成として読むのが適切です。

横笛は篳篥のようなリードを使わず、吹き口に息を当てて鳴らします。文化デジタルライブラリーは、龍笛の幅のある音、高麗笛の鋭さ、神楽笛の息を含む柔らかさを説明しています。録音や会場で音の印象は変わるので、音色の形容だけを判定の試験にせず、演目と楽器名を照らし合わせる手掛かりにできます。

楽琵琶と楽箏は音を埋め続けず、節目を響かせる

管絃の楽琵琶と楽箏は、旋律を休みなくなぞる伴奏ではなく、短い響きによって拍や音楽の流れを示します。音を出していない間も、長い管の響きとの関係の中に位置付けられます。

楽琵琶は四本の絃を持ち、撥ではじいて奏します。絃をまとめてかき鳴らす動きや、音を分けて奏する動きが節目を作ります。現代のギター伴奏のように毎拍同じ形を繰り返すものを想像すると、休みが多いように聞こえるかもしれませんが、その間隔自体が合奏の進み方に関わっています。

楽箏も、絃をはじく型によってリズムや速さを示します。箏は管絃のほか催馬楽にも用いられますが、舞楽の基本編成には入りません。写真で琵琶や箏が並ぶかどうかは、演奏形式を読む有力な手掛かりです。

鞨鼓・太鼓・鉦鼓は同じ打楽器でも仕事が違う

鞨鼓は合奏を先導し、太鼓と鉦鼓はそれぞれの響きで拍の大きなまとまりを示します。打楽器が少ない回数しか鳴らない部分でも、曲の構造を支える役割があります。

鞨鼓は台に横置きした胴の両面を二本の撥で打ちます。対して高麗楽で用いる三ノ鼓(さんのつづみ)は、構え方や打ち方が異なり、一本の撥で片面を打つ楽器です。左右の舞楽でこの楽器が入れ替わることを知ると、音だけでなく舞台上の姿からも編成を読めます。

鉦鼓は金属製の打楽器で、太鼓の低い響きと対照になる音を出します。また太鼓には、管絃で見られる釣太鼓と、屋外の舞楽などで見る大きな太鼓があります。名前が同じでも舞台での大きさや設えが違うため、大太鼓の写真を管絃の全公演の標準だと思わないようにします。

西洋の管弦楽のように指揮棒を振る人が前にいないからといって、各自が自由に進めているわけではありません。鞨鼓の撥を取る動作や打ち方などが、始まりや進行の合図に関わります。誰が大きく目立つかより、誰の動きで音が始まり変わるかを見ると、合奏の連携が見えてきます。

舞楽の左舞・右舞|唐楽と高麗楽を編成で比べる

舞楽は基本的に、唐楽を伴う左舞(さまい)と、高麗楽を伴う右舞(うまい)に分かれます。舞台への出入り、装束の傾向、笛や打楽器の違いを組み合わせると、それぞれの特徴をつかめます。

左方と右方の編成比較
見る項目 左舞・左方 右舞・右方
音楽の系統 唐楽 高麗楽
基本的な管楽器 笙・篳篥・龍笛 篳篥・高麗笛
先導する打楽器 鞨鼓 三ノ鼓
装束の基本的傾向 赤系 緑系
出入りを見る基準 観客から見て左方 観客から見て右方

この表は基本形で、例外的な編成や装束の演目まで一律に当てはめるものではありません。色だけを見て系統を断定するより、プログラムの「左方」「右方」の表記を先に読み、笛と打物の変化を合わせて観察すると、衣装の例外があっても迷いにくくなります。

唐楽は、名前に唐の字があっても、中国からの楽曲だけを単純に数えた区分ではありません。日本へ伝わった多様な楽舞が整理される過程で成立した系統です。高麗楽も、現代の一国の音楽をそのまま代表する名称ではなく、朝鮮半島などから伝わった楽舞が日本でまとまった歴史的な分類として読みます。

番舞は左右の演目を組にして味わうしくみ

番舞(つがいまい)は、左舞と右舞の演目を組にして演じる考え方です。一つの舞が終わった後に別の舞が続くとき、その対になる関係も公演の構成になります。

たとえばプログラムに左方と右方の演目が並んでいたら、曲名を一件ずつ暗記するだけでなく、舞人の人数、動きの性格、衣装の色、楽器の入れ替わりを同じ項目で見比べられます。

番舞は、どんな左舞と右舞でもその場で自由に組み合わせるという意味ではありません。歴史の中で演目の組合せや演じ方が整ってきました。案内に番舞の説明があれば、その組にした関係を読むことで、前後の演目を一つの流れとして鑑賞できます。

歌謡の種類|催馬楽・朗詠と国風歌舞

催馬楽と朗詠は平安時代に宮廷で育った歌物で、国風歌舞は日本古来の歌舞を基にする系統です。日本語の歌か漢詩文か、どんな楽器が伴うかを分けて見ると、名称の違いが具体的になります。

種目 言葉や成り立ち 伴奏の手掛かり
催馬楽(さいばら) 各地の民謡を取り入れ、宮廷の歌として整えたもの 三管・両絃と笏拍子
朗詠(ろうえい) 漢詩文に節を付けて歌うもの 三管を中心とし、歌の伸縮に沿う
国風歌舞 神楽歌・東遊など、日本古来の歌舞を基に育ったもの 神楽笛・和琴・笏拍子など、種目による

催馬楽と朗詠は歌詞の出どころと拍の扱いが異なる

催馬楽は民謡由来の歌詞を歌い、朗詠は漢詩文を歌います。催馬楽には拍に沿った伴奏があり、朗詠では言葉と節の伸縮を聴く比重が大きくなります。

「漢詩文を歌う」といっても、現代中国語の発音で歌うという意味ではありません。日本での読み方と節付けによって受け継がれてきた歌です。

催馬楽で用いる笏拍子(しゃくびょうし)は、木の板を打ち合わせる楽器です。朗詠と聞き比べるときは、音の強弱だけでなく、打音や絃楽器が拍の足場を作るかどうかに注目できます。歌い手が一人で歌い始め、その後に声が重なる関係も、器楽だけの管絃と異なる観察点です。

国風歌舞は在来の歌舞を基にしながら変化してきた

国風歌舞は、日本に古くからあった歌舞を基にする雅楽の系統です。外来音楽と無関係なまま固定されてきたのではなく、渡来の音楽を取り入れ、整えられてきました。

神楽歌や東遊(あずまあそび)などがあり、歌と舞、儀礼が深く結び付いています。ここでいう宮廷の神楽と、各地の祭りで見る民俗芸能の神楽は、同じ言葉を含んでいても対象をそろえて説明する必要があります。「神楽」とだけ聞いて、全国で同じ楽器と曲が演じられると考えない方がよいでしょう。

和琴(わごん)や神楽笛など、国風歌舞で目にする楽器を知ることも、三管両絃三鼓だけを雅楽全体としないために役立ちます。

雅楽の歴史|伝来・日本での再編・近代の継承

雅楽の歴史は、大陸からの伝来、日本での創作と体系化、衰退や復興、近代の伝承の整理という流れで読むと理解しやすくなります。古さだけでなく、何が作り替えられ、どう受け継がれたかが重要です。

伝来から継承と再編の歴史
時期 大きな動き 現在の鑑賞とつながる点
古代 在来の歌舞に大陸からの楽舞が加わる 異なる来歴の種目が共存する
奈良時代 宮廷の機関や儀礼で楽舞が演じられる 儀礼と音楽の関係
平安時代 作曲・編曲、左右の体系、管絃や歌物が発達 現在の形式を分ける基礎
中世から江戸時代 伝承の危機と各地での継承、復興 土地や伝承系統による歴史
明治以降 雅楽局への集約、明治撰定譜、民間団体の発展 現行曲の整理と多様な担い手

平安時代には作曲・編曲と新しい楽しみ方が生まれた

平安時代には、日本人による作曲や編曲が盛んになり、渡来した楽舞を日本の宮廷文化の中で組み替える動きが進みました。管絃や歌物の発達も、この変化の一部です。

文化デジタルライブラリーは、仁明天皇の頃に作曲家や作舞家が活躍したこと、左右の近衛府と関わりながら唐楽と高麗楽の二系統が整えられたことを説明しています。近衛府は朝廷を警護する組織です。左右の舞という区別には、衣装の色だけでない、当時の制度や担い手とのつながりがあります。

貴族が自ら演奏するようになると、舞を伴わず楽器の合奏を楽しむ管絃が育ちます。儀礼のためだけでなく、季節や自然を味わう宮廷生活にも音楽が関わりました。催馬楽や朗詠の広がりも含めて考えると、雅楽を単に寺社の祭りで鳴る音とだけ捉えるより、歴史の中の用途の幅がわかります。

戦乱の危機を支えた奈良・大阪の伝承

応仁の乱などの戦乱で京都の宮廷社会が荒廃したとき、奈良や大阪の楽人が伝えていた技芸や資料が、雅楽の復興を支えました。雅楽が宮廷以外にも伝わっていたことが、危機を越える力になりました。

宮廷や寺社で楽舞を担う組織を楽所(がくしょ)といい、南都、つまり奈良や、天王寺のある大阪にも整えられていました。演奏を担う家々では、技芸だけでなく楽譜や楽書も伝えられました。楽書とは、雅楽についての伝承や知識を記した書物です。人が離散した後も、こうした複数の伝承が残っていたことに意味があります。

桃山時代には奈良や大阪の楽人が朝廷へ呼ばれ、京都を含む三つの地域の伝承を集める三方楽所のしくみが生まれます。江戸時代には国風歌舞や歌物の復興も進みました。現在の雅楽を聴くことは、古い曲だけでなく、それを学び直し演じ直してきた人々の積み重ねに触れることでもあります。

明治撰定譜は複数の伝承を整理した楽譜集

明治撰定譜(めいじせんていふ)は、明治期に曲目や演奏の伝え方を整理して編まれた楽譜集です。現在の宮内庁楽部の伝承を考えるうえで、大きな節目になります。

皇居が東京へ移った後、京都・奈良・大阪に関わる三方楽所や江戸の紅葉山楽人などが、新しい雅楽局へ集まりました。それまで別々に伝えていた奏法や曲目を合わせるために協議が重ねられ、1876年に楽譜集、1888年に追加の楽譜集が編まれます。古いものを無条件に全部残すだけでなく、共に演奏し教えるための選定が行われたのです。

選定から外れた曲目は「遠楽(えんがく)」と呼ばれます。公演案内で「復曲」とあれば、現在よく演じられる曲を普通に演奏することとは区別し、資料に基づいて曲をよみがえらせる取り組みとして読めます。過去の姿がすべて録音で残るわけではないので、復曲には調査や解釈が関わります。

宮内庁だけでなく寺社や民間団体も雅楽を伝える

雅楽は宮内庁楽部のほか、寺社に関わる団体や民間の雅楽団体などによっても演じられています。伝統の継承と、復曲・新作などの取り組みが並行しています。

宮内庁楽部の雅楽は1955年に国の重要無形文化財に指定され、2009年にはユネスコの無形文化遺産の代表一覧に記載されました。この説明は、特定の伝承を担う組織と芸能に関するもので、雅楽器を使った新曲やすべての団体の活動が個別に同じ登録を受けた、という意味ではありません。

一方、民間では演奏会や講習、学校での紹介なども行われています。舞台で見る人をすべて宮内庁の楽師と思わず、出演団体や演奏者名も読むと、公演の成り立ちがわかります。東儀秀樹のように雅楽器の音を広い層へ伝える活動も、伝統的な公演とは異なる入口になります。使用楽器が同じでも、作品が伝統曲か新しい編曲かは曲目説明で分けられます。

雅楽の音楽を聴く手掛かり|調子・拍・唱歌

雅楽の長い流れを追うには、調子という音の体系、打楽器や絃楽器が作る拍のまとまり、声で伝える唱歌という三つの手掛かりがあります。西洋音楽の楽譜や拍子へ単純に置き換えず、雅楽の中での働きを見ると理解できます。

調子は曲名と別に記され、越天楽にも複数の調子がある

雅楽の「調子」は、音の組立てや旋律の性格に関わる区分です。唐楽では六つの調子があり、曲名が同じでも調子の違いによって別の姿で演奏されることがあります。

六つは壱越調(いちこつちょう)、平調(ひょうじょう)、双調(そうじょう)、黄鐘調(おうしきちょう)、盤渉調(ばんしきちょう)、太食調(たいしきちょう)です。初めての鑑賞で全てを聴き当てる必要はありません。案内に「平調越天楽」とあれば、平調が曲名の一部ではなく、その演奏が属する調子だと読めることが第一歩です。

越天楽には平調・黄鐘調・盤渉調のものがあります。別の調子へ移された曲は「渡物(わたしもの)」と呼ばれます。曲名だけで録音を比較せず、調子までそろえると、同じ条件での演奏の違いを聴きやすくなります。

遅く聞こえる音楽にも拍のまとまりと進行がある

雅楽は、長く伸びる音と疎らな打音が重なるため、初めて聴くと拍の位置がつかみにくいことがあります。旋律の細かな動きだけでなく、打物と絃の音が戻ってくる位置を聴くと、大きな流れを追えます。

ポップスのドラムのように一小節ごと同じ型が目立って聞こえるとは限りません。最初は全ての音を数えず、太鼓が鳴った後にどの音が続くか、琵琶の響きがどの間隔で現れるかなど、一つの役割へ注意を絞ると、演奏が動いていることを捉えやすくなります。

唱歌は声で旋律と奏法を身に付ける伝承方法

唱歌は雅楽では「しょうが」と読み、楽器の旋律や奏法を声で唱えて学ぶ方法を指します。歌謡という演奏種目や、学校の唱歌とは、言葉の役割が異なります。

楽譜の記号だけで音の長さや息の運びを全て読み取るのでなく、師から示された唱歌と演奏を結び付けて伝えていくことが、雅楽の習得を支えます。鑑賞者にとっては、雅楽に楽譜がないという誤解を解き、譜と声と実演が組み合わさる伝承だと理解する助けになります。

体験講座などで唱歌を聴く機会があれば、その後の楽器の音と同じ旋律を探せます。鑑賞の入口として、音を鳴らす前に声で形を共有するという、合奏を支える仕組みに注目できます。

初めて聴く曲と公演案内の読み方

初めてなら、管絃の音を聴く入口に越天楽、舞台の動きを見る入口に陵王(りょうおう)などを選び、曲名と演奏形式を一緒に確かめると迷いにくくなります。知名度だけで順位を作るより、何を見聞きしたいかで選ぶ方法です。

越天楽と陵王では注目する対象が変わる

越天楽では管と絃と打物の重なりを、陵王では面を着けた一人の舞と音楽の関係を観察できます。どちらも雅楽を知る入口になりますが、同じ楽しみ方を求める必要はありません。

越天楽を探す際は、まず伝統的な管絃の演奏であるかを見ます。よく知られた旋律だけに、別の楽器による編曲や歌を付けた表現も探す対象へ混じります。伝統の編成を知る目的なら、演奏者の欄や楽器の説明を読み、笙・篳篥・龍笛と両絃・打物の合奏を選ぶと、この記事の楽器表と対応させられます。

陵王は「蘭陵王」と表記されることもあり、竜の装飾のある面や舞具が目を引く演目です。鑑賞では、面の細部だけでなく、舞人が向きを変えるときや止まるときに音楽がどう関わるかを見ると、舞としての輪郭を追えます。

曲名・形式・系統・出演者の順に読む

公演案内は、曲名だけでなく、管絃か舞楽か、唐楽か高麗楽か、誰が演じるかを順に読むと内容を想像できます。

管絃・平調・越天楽の読み方
案内で見つけた表記 そこから読み取れること 次に見る欄
管絃・平調・越天楽 舞を伴わない合奏、平調の越天楽 編成と演奏団体
舞楽・左方 唐楽を伴う舞の系統 曲名、舞人の人数、装束や面の解説
朗詠 漢詩文を歌う歌物 歌詞や大意、演奏曲名
復曲・新作 通常の現行曲の上演とは異なる取り組み 資料に基づく復元か、現代の創作か

儀礼の一部として演奏される雅楽と、鑑賞のために構成された演奏会では、客席や見学方法、進行の説明が違います。申込の要否、開場時刻、撮影の可否は、音楽の形式からは判断できません。内容を選ぶ読み方と、参加するための条件を分けて確認すると、公演の性質に合った準備ができます。

宮内庁の雅楽案内や、国立劇場の公演情報、出演団体や寺社の現行案内で、日時と申込方法を調べられます。演奏中の作法も主催者の指示を優先し、曲の区切りがわからない場合は周囲の進行を見て静かに鑑賞できます。

楽器の写真と音を結び付けるなら『雅楽のひみつ新版』

『雅楽のひみつ新版』は、楽器の形と音色、舞台の見方を一緒に知りたい人の補助になる本です。ここで紹介するのは日本雅樂會監修の2024年新版で、2021年の旧版と区別します。

出版社の案内では、雅楽の基本、舞台と鑑賞、名曲、歴史を扱う128ページの構成で、楽器の音色を視聴できるコードも付いています。楽器名を文字で覚えるだけでは音と結び付かない人や、公演後に見た装束や曲を調べ直したい人に向く内容です。

内容の紹介は出版社が示す構成に基づくもので、全ページを読了した体験レビューではありません。体系的な入門書と、その日の公演プログラムを役割の違う資料として組み合わせられます。

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雅楽からほかの音楽へ関心を広げたい場合は、主要50種類の音楽ジャンルを比べる一覧で、地域の伝統音楽とポピュラー音楽などの大きな位置関係を確認できます。個々の雅楽の種目を見分けるときは、この記事の演奏形式と楽器の表へ戻ると対象が絞れます。

雅楽についてよくある質問

読み方や代表曲など、最初に迷いやすい点を短く整理します。分類を詳しく比べるときは、管絃・舞楽・歌謡と楽器の説明を組み合わせて読めます。

「雅楽」の読み方は?

「ががく」と読みます。日本古来の歌舞と大陸から伝来した音楽が重なって育ち、管絃・舞楽・歌謡などの形で演じられる芸能です。

雅楽で有名な曲は?

管絃の入口には越天楽、舞楽には陵王などがあります。越天楽は調子による違いもあるため、録音を選ぶときは曲名と調子を一緒に見ます。

雅楽はどんな音楽ですか?

宮廷を中心に育った、楽器の合奏・舞・歌を含む日本の伝統芸能です。笙・篳篥・龍笛などを使いますが、楽器編成は種目によって変わります。

伎楽と雅楽の違いは何ですか?

伎楽(ぎがく)は大きな面を用いる仮面劇で、雅楽の別名ではありません。雅楽は管絃・舞楽・歌謡などを含み、舞楽にも面を使う演目があります。

出典・参考資料

情報確認日:2026年10月27日。

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