「なごり雪」は伊勢正三が作詞・作曲し、1974年にかぐや姫が発表した歌です。翌年のイルカ版から広く親しまれた歩みを、誕生の背景・駅での物語・三つの録音の違いから解説します。
春に近づく頃の別れを描く歌なのに、イルカのシングルが出たのは11月でした。また「イルカのなごり雪」にも、同じ年に発売された別の編曲があります。作者、歌い手、歌の中の人物を分けてたどると、なじみの一曲の見え方が変わります。原曲へ戻って聴きたい人にも、最近のカバーから知った人にも使える鑑賞ガイドです。

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- なごり雪とは|伊勢正三の作品をイルカが歌い広めた
- 誕生の背景|『三階建の詩』で作詞・作曲に挑んだ
- 題名の意味|残っている雪より、別れを惜しむ雪
- 歌の物語|駅で見送る時間を三つの場面で読む
- 「僕」と「君」の関係|歌手と語り手を同じ人物にしない
- 春と成長が重なる|寂しさの中にも時間は進む
- 東京と津久見|歌の舞台と作者の記憶を分けてたどる
- 原曲とイルカ版の違い|三つの録音を編曲者で比べる
- イルカが歌うまで|ためらいを越えて生まれたカバー
- 後の録音へ|2002年版・ライブ・別の歌手によるカバー
- 発売年と歌の季節は別|歩みを年表で整理する
- 駅のメロディーや映画へ|地域の記憶として残った歌
- 最近のカバーから聴く人へ|あいみょん・桑田佳祐の歌唱
- イルカの歌唱をCDで聴くなら|55周年ベストの収録位置
- なごり雪についてよくある質問
- まとめ|原曲へ戻ると、別れの物語と歌い継ぐ人が見えてくる
- 出典・参考資料
なごり雪とは|伊勢正三の作品をイルカが歌い広めた
原曲を発表したのはフォークグループのかぐや姫、作者はそのメンバーの伊勢正三です。イルカの代表曲として知られていますが、最初からイルカのために作られた歌ではありません。
| 関係 | 人物・作品 | 区別したいこと |
|---|---|---|
| 作詞・作曲 | 伊勢正三 | 歌う言葉と旋律を作った人 |
| 原曲 | かぐや姫『三階建の詩』、1974年 | 最初にアルバムで発表された歌唱 |
| 広く親しまれたカバー | イルカのシングル、1975年 | 別の歌い手による録音 |
| 歌の中の語り手 | 見送る側の人物 | 作者や実際の歌手と分けて読む |
作詞は歌の言葉を作ること、作曲は音の高さや長さがつながる旋律を作ることです。伊勢正三はこの二つを担当しています。編曲は、楽器の選び方や伴奏の形を整える仕事で、原曲とイルカ版では担当者が異なります。歌手名を一つ覚えるだけでは、この曲がどう受け継がれたかまでは見えてきません。
かぐや姫は、南こうせつ、山田パンダ、伊勢正三の三人からなるグループです。「なごり雪」の原曲はかぐや姫名義のアルバムに入り、伊勢正三の歌唱として聴けます。グループ名と個人名が検索結果に併記されるのは、この関係があるためです。「南こうせつのグループの曲だから、作者も南こうせつ」とはなりません。
カバーとは、すでにある作品を別の歌手や演奏者が新たに取り上げることです。題名や旋律を受け継ぎながら、声や伴奏の組み立てによって別の表現が生まれます。原曲とカバーを知る楽しみは、どちらが上かを先に決めることより、同じ作品が違う形で届く理由を聴くところにあります。
誕生の背景|『三階建の詩』で作詞・作曲に挑んだ
「なごり雪」は、かぐや姫のアルバム『三階建の詩』へ向けて、伊勢正三が作詞と作曲の両方に本格的に挑んだ作品です。それまでにも作詞やコーラスを担当していた伊勢正三が、言葉と旋律の両方を作る役割へ進んだ時期に生まれました。
伊勢正三は本人の回想で、このアルバムでは三人がそれぞれの個性を出すことが求められていたと説明しています。「神田川」がヒットした後のグループが、次へ進もうとしていた時期です。伊勢正三にとって、自分の言葉と旋律をそろえた曲を発表することは、単にアルバムの曲数を満たす作業ではありませんでした。
制作の順序では、「なごり雪」が先にでき、その後に「22才の別れ」が生まれています。二曲は同じアルバムに入りますが、その後の広がり方は違います。「22才の別れ」は、かぐや姫の後に伊勢正三が結成した風のデビューシングルとしても知られるようになりました。「なごり雪」は、イルカによるカバーが大きな入口になりました。
サビの言葉と旋律が同時に浮かび、その後に駅の情景が広がった、と伊勢正三は回想しています。言葉をすべて書き終えてから曲を付けたのでも、伴奏の上へ後から物語を置いたのでもありません。印象の中心になる部分が先にあり、そこへ人の距離と景色が結び付いていく作り方でした。
また「一晩でできた名曲」という語りを二曲へ一律に当てはめると、制作の違いが見えなくなります。2024年の本人の回想では、「なごり雪」は試行錯誤を経た曲、「22才の別れ」は締め切りを延ばしてもらった後の一晩に作った曲として語られています。短い逸話へまとめるより、二つの曲で作り方も違ったと知る方が、誕生の背景に近づけます。
題名の意味|残っている雪より、別れを惜しむ雪
伊勢正三が題名へ込めたのは、その年の最後に降る、名残惜しさを感じる雪のイメージです。春になっても地面に残る雪だけを指していると考えると、歌の情景とずれます。
「名残」は、何かが過ぎた後にも残る気配や、去っていくものを惜しむ気持ちにつながる言葉です。この曲では、冬から春へ季節が動く時間と、そばにいた人が離れていく時間が重なっています。雪がどれだけ積もるかという量よりも、降っては消えていく短さに、人の心が追いつかない感覚を重ねて聴けます。
本人の2024年の文章では、東京駅のホームと出発を待つ列車、積もらない雪の情景が語られています。雪が降る一瞬と、人の旅立つ一瞬が結び付く。そのため題名は、冬の景色の説明であると同時に、終わってほしくない時間の名前のようにも働きます。これは作品を聴くための読み方であり、天気の数値を定義した用語ではありません。
「なごりの雪」と「なごり雪」の違いについても、作者は意識して説明しています。曲名の間に「の」を足して自然な言い方に直せばよいという話ではなく、自分が描きたい降る雪を短い言葉へ置いたのです。題名が少し引っ掛かるからこそ、情景と感情を同時に思い出す言葉になった、と受け取れます。
3月の季節の言葉としても広がった
日本気象協会が2013年に選んだ「季節のことば36選」では、「なごり雪」が3月の言葉に入っています。歌から親しまれた言葉が、現代の季節感を表す案内にも使われている例です。
この選定は、昔からある二十四節気そのものを「なごり雪」に置き換えたものではありません。二十四節気は一年の季節の移り変わりを24の区切りで示す暦の言葉です。「季節のことば36選」は、それとは別に、暮らしの中で感じる季節の言葉を集めた企画でした。曲名が入ったから、気象観測上の雪の種類になったと考えるのも違います。
3月の同じ欄には「ひな祭り」「おぼろ月」が並びます。月の情景や行事と同じように、春先に思い浮かべる言葉として選ばれたのです。歌の中の雪と、自分の暮らす地域で降る雪の時期がぴったり同じでなくても、冬を見送る感覚から題名を受け取れます。
歌の物語|駅で見送る時間を三つの場面で読む
歌は、二人で列車を待つ時間、列車が動き出す瞬間、相手が去った後のホームへ進みます。大きな事件を詳しく説明せず、残される側の視線の変化から別れを描く構成です。

| 場面 | 二人の距離 | 見送る側の意識 |
|---|---|---|
| 出発前 | そばにいる | 時間を気にしながら、別れを待つ |
| 列車が動く | 窓を隔てて離れ始める | 相手の言葉と向き合うことを恐れる |
| 見送りの後 | ホームに一人残る | 消えていく雪を見つめる |
最初の場面では、二人はまだ同じ場所にいます。それでも時計を意識することで、そばにいられる時間には終わりがあると分かります。別れが起こってから悲しむのではなく、まだ離れていないうちから、その先の距離が現在へ入り込んでいるのです。列車を待つという日常的な状況が、短い歌の中で大きな意味を持ちます。
列車が動き出すと、二人の間に窓という境目ができます。相手の口元に現れる別れの言葉を受け止める怖さが描かれ、伝わること自体がつらい距離になります。見送る人が視線を下へ向けるのも、相手が嫌いになったからと単純に読むより、別れを決定的な言葉として受け取ることへの怖さとつなげると、場面が続きます。
最後に残るのは、ホームと、落ちて消えていく雪です。相手の旅のその後は、詳しく語られません。見送る人がその場からすぐに新しい行動へ移ることも描かれません。進んでいく列車と、その場所に残る時間の差があるからこそ、聴き終わった後にも余韻が残ります。
「僕」と「君」の関係|歌手と語り手を同じ人物にしない
語り手は、旅立つ相手を見送る側です。歌の一人称は、物語をどの場所から見るかを示す言葉です。
作者、歌唱者、語り手が一致する作品もありますが、いつもそうとは限りません。「なごり雪」では、作者の伊勢正三が作った物語を、イルカをはじめ別の歌手も表現しています。歌う人が変わっても、見送る側という視点は残せます。
「僕」「君」という呼び方は親しい距離を感じさせ、恋人の別れとして読むことができます。ただし、別れの事情や、その後の二人の関係までは明示されません。年齢や職業を補うより、歌の中にある視線と距離の変化をたどると、短い物語の余白を保って読めます。
春と成長が重なる|寂しさの中にも時間は進む
この歌の春は、明るい新生活だけを表す季節ではありません。冬が去り、人が変わり、関係も同じ形では続かないという時間の動きを、別れの場面へ重ねています。
同じ印象的な旋律と言葉が戻る部分を、サビと呼びます。「なごり雪」では、駅での出来事が進む中で、春と相手の変化を捉えるサビが繰り返されます。前の場面と後の場面で二人の距離が違うため、同じ部分が戻っても、聴く側の理解は少しずつ変わります。単に同じ感情を強く言い直しているだけではありません。
出発前なら、目の前の相手を見ている言葉として聴けます。列車が動いた後には、もう引き留められない相手への思いが加わります。最後のホームでは、視界から消えた相手を思う言葉へ変わる。その場所の変化に沿ってサビを聴くと、短い歌でも感情に奥行きが生まれる仕組みが分かります。
「きれい」という受け止め方も、容姿だけの比較に狭めない方が、歌の時間とつながります。相手の成長や、自分の知らなかった変化への気付きまで含む表現として読めるからです。これは歌詞からの解釈であって、作者が登場人物の変化を一つの意味に定義したという話ではありません。聴く人の年齢や経験によって響く場所が変わる余地があります。
雪は落ちて消え、列車は進み、春は来る。その三つは、見送る側の気持ちが追い付くかどうかと関係なく動いていきます。情景の中に時間の進行があるため、別れは一瞬の言葉だけではなく、景色の変化として届きます。歌を覚えていなくても、窓、ホーム、雪という位置関係を頭に置くと、物語の進み方を聴きやすくなります。
東京と津久見|歌の舞台と作者の記憶を分けてたどる
歌の中では東京を去る場面が示され、作者の故郷である大分県津久見市にも、この曲と深い縁があります。歌詞の地名と、作者が育った場所や制作時に思い浮かべた風景は、分けて考えられます。

伊勢正三は2024年の回想で、制作時にイメージした情景として東京駅のホームとブルートレインを挙げています。ブルートレインは、青い車体で親しまれた寝台特急などの呼び名です。ここで大切なのは列車の型式を当てることではなく、長い距離を移動する旅立ちが、二人の別れを一度きりの大きな区切りに見せることです。
一方、津久見駅には「なごり雪」の歌詞を刻んだ碑があり、特急の発着時には曲のメロディーが流れると、大分県の観光情報が紹介しています。作者の出身地が作品を受け継いでいる、具体的な場所です。東京という歌詞を見たから津久見との関係はない、と切り離す必要もありません。
歌詞に書かれた風景、作者が語る制作時のイメージ、故郷での受け継がれ方を三つに分けると、「本当の駅はどこか」という一問に無理に縮めずに読めます。歌の場面を知るときは歌詞と本人の回想、地域とのつながりを知るときは現地の碑や駅の案内、と、知りたいことに合う手掛かりが違います。
原曲とイルカ版の違い|三つの録音を編曲者で比べる
聴き比べの軸になるのは、1974年のかぐや姫版、1975年のイルカのシングル版、同年のアルバム『夢の人』の版です。イルカの二つの録音は編曲者が異なるため、歌手名と年だけでは区別できません。
| 歌唱・収録先 | 発表 | 編曲 | 違いをつかむ入口 |
|---|---|---|---|
| かぐや姫『三階建の詩』 | 1974年 | 瀬尾一三 | 原曲の歌唱と伴奏 |
| イルカのシングル「なごり雪」 | 1975年11月5日 | 松任谷正隆 | 広く知られた前奏を持つシングル版 |
| イルカ『夢の人』 | 1975年11月5日 | 石川鷹彦 | アコースティックなギター中心のアルバム版 |
原曲は『三階建の詩』の九曲目に収録されています。日本クラウンの作品情報は、作詞・作曲を伊勢正三、編曲を瀬尾一三と記しています。原曲を知る目的なら、イルカのベスト盤へ戻るのではなく、このアルバムのかぐや姫名義の歌唱へ進むと、最初の発表に結び付けられます。
イルカのシングルでは、松任谷正隆が編曲を担当しました。TOKYO FMの番組解説も、元のフォーク調の作品からポップスの響きへ整えた点を取り上げています。前奏は歌が始まる前の器楽部分です。言葉をまだ歌っていない段階から作品を思い出す入口になる、というのが、この版の編曲を聴く面白さです。
『夢の人』のアルバム版は、石川鷹彦の編曲です。2022年の本人インタビューでは、河口湖の屋外にマイクを置き、皆で演奏する感覚で録音した経緯が語られています。アコースティックとは、主に生楽器の響きを生かす方向を指す言葉です。同じ歌手が同じ年に歌った曲でも、録音の場と伴奏の発想が違う一例になります。
この三つを比べるときは、まず歌唱者と収録先を固定し、その後に声と伴奏へ耳を向けられます。かぐや姫版とイルカのシングルなら、歌手と編曲の両方が変わります。イルカの二録音なら、歌手を共通にしたまま、編曲と録音の作り方の差へ集中できます。比較したいものに合わせて二つを選ぶと、何が印象を変えるのかを考えやすくなります。
イルカが歌うまで|ためらいを越えて生まれたカバー
イルカによるカバーは、夫でプロデューサーの神部和夫が、この曲をイルカに歌わせたいと考えたことから進みました。イルカ自身は、かぐや姫と同じ舞台に立ち、ファンがこの曲を大切に聴く様子を知っていたため、初めはためらいがあったと語っています。
プロデューサーは、作品の方向や制作をまとめる立場の人です。この場合は、すでにある歌をイルカの声で届けるという選択そのものに関わっています。作詞・作曲を担当していなくても、どの歌を誰が歌うかという決定が、その後の作品の届き方を大きく変えます。
伊勢正三の回想では、本人はカバーを喜び、録音の現場でその思いをイルカへ直接伝えたとしています。作品を作った側が、別の声による表現を受け入れることで、新しい歌唱へ進めた関係です。歌を渡す側と受け取る側の両方の発言を読むと、このカバーは原曲を押しのける行為ではなく、作品を次へ届ける協力として捉えられます。
本人の回想には、発売直後にすべてが決まったのではなく、少しずつ広がっていったという説明もあります。今は誰もが知る歌のように感じられても、最初から現在の位置にあったわけではありません。アルバムで発表され、ステージで聴かれ、別の歌手のシングルとなり、さらに聴く人を増やしたという段階があります。
伊勢正三は後年、自分や歌い手の名前から離れても、曲そのものが多くの人の間に残ることを喜んでいます。作者が知られていないことを単なる損失として見るのではなく、歌が人の生活へ入った結果として見る視点です。その一方で作者や原曲へ戻れば、広く知られた歌の前にあった、制作と表現の違いをもう一度聴けます。
後の録音へ|2002年版・ライブ・別の歌手によるカバー
イルカは1975年の録音を再発売するだけでなく、2002年にも新しい編曲で「なごり雪」を録音しています。ライブの記録や別の歌手のアルバムへ進むと、歌い継がれた歩みを、実際に聴ける作品でたどれます。

2002年の『こころね』は、同じ編曲者による新しい録音
2002年6月21日発売の『こころね』は、イルカの30周年を記念したアルバムです。「なごり雪」の新しい版を一曲目に置き、松任谷正隆が再び編曲を担当しました。
この企画では、ラジオ番組『イルカのミュージックハーモニー』のリスナーから、イルカに歌ってほしい曲を募りました。以前から歌ってきた曲の再録音と、新たに取り上げる曲を一枚にまとめ、かつての編曲者へ改めて依頼しています。「海岸通」は佐藤準、「雨の物語」は石川鷹彦というように、曲ごとに制作のつながりがあります。
したがって「イルカ歌唱・松任谷正隆編曲」という二つの名前が同じでも、1975年のシングルと2002年版は別の録音です。前者はカバーが広がった当初の姿、後者は約四半世紀を経て同じ作品を捉え直した姿として聴けます。後年のアルバムに1975年の録音を再収録することと、2002年に演奏を新しく録ることの違いが、具体的に分かる組み合わせです。
さらに同年11月21日のマキシシングル、品番CRCP-504には、2002年版に加えて韓国語版も入りました。マキシシングルは、複数の曲や別バージョンを収めたCDシングルの呼び方です。日本語で親しまれた歌が別の言語でも歌われる段階へ進んだことを、一つの商品の曲目からたどれます。
1976年のライブを、2013年の復刻盤で聴く
1976年の『イルカ・ライヴ』には、石川鷹彦の編曲による「なごり雪」が十曲目に入っています。2013年の『イルカアーカイブVol.2』は、そのライブアルバムを収めた三枚組です。
アーカイブは、過去の記録を保存し、改めて利用できる形にまとめたものを指します。この作品では1976年の『イルカ・ライヴ』と1977年の『植物誌』に、未発表のライブやスタジオ音源を加えています。元のライブは1976年4月24日の九段会館での演奏で、アルバムは同年6月10日に発売されました。復刻では、元のアナログ・マスターからリマスタリングしています。アナログ・マスターは録音を保存した元のテープなどを指し、リマスタリングはその録音の音を商品へ収めるために改めて整える作業です。演奏し直す再録音とは、手を加える段階が違います。
この場合、CDの商品情報に2013年とあっても、2013年に歌い直したライブではありません。翌1976年、九段会館の舞台で歌われていた姿へ戻る入口です。スタジオは録音のために音を整える場所、ライブは観客を前にした演奏の記録なので、同じ歌手と曲でも、演奏が置かれる場面まで変えて聴けます。
德永英明の『VOCALIST 2』にも収録
別の歌手によるカバーの例として、德永英明の『VOCALIST 2』には「なごり雪」が十曲目に入っています。2006年8月30日に発売されたアルバムです。
ユニバーサルミュージックの曲目表は、この歌についても作詞・作曲を伊勢正三と記しています。同じアルバムには「いい日旅立ち」「あの日にかえりたい」「シングル・アゲイン」なども並びます。イルカの代表曲として出会った歌を、別の男性歌手の歌唱で聴く、実在する収録先の一例です。
原曲の伊勢正三、カバーを広めたイルカ、後に取り上げた德永英明という順に聴くと、「男性の歌を女性が歌い、さらに別の歌手が歌う」という関係が分かります。それでも作者の表記は伊勢正三のままです。歌唱が増えることと、誰が作品を作ったかという記録が変わることは別であり、声の違いを楽しみながら来歴も追えます。
目的別の収録先を選ぶ
後年の再録音、初期のライブ、別の歌手のカバーでは、次に進む作品が異なります。知りたい違いを先に決めると、次の三つから収録先を絞れます。

| 次に知りたいこと | 対応する収録先 | 見分ける表示 |
|---|---|---|
| イルカ本人の後年の再録音 | 『こころね』、2002年 | 一曲目のニューバージョン |
| 初期の舞台での歌唱 | 『イルカ・ライヴ』、1976年 | 十曲目、石川鷹彦編曲 |
| 別の歌手のカバー | 德永英明『VOCALIST 2』、2006年 | 十曲目、伊勢正三の作詞・作曲 |
発売年と歌の季節は別|歩みを年表で整理する
曲の情景は春先ですが、イルカのシングルは1975年11月に出ています。歌が描く季節、原曲の発表年、特定の録音や復刻商品の発売年は、同じ数字にそろえる必要がありません。

| 年 | 出来事 | 作品の歩みでの意味 |
|---|---|---|
| 1974年 | かぐや姫『三階建の詩』に収録 | 原曲の発表 |
| 1975年 | イルカのシングルと『夢の人』発売 | 異なる編曲による歌唱の広がり |
| 1976年 | 『イルカ・ライヴ』発売 | 初期の舞台での歌唱を記録 |
| 1996年 | 番組『あの曲この人』でイルカが語り歌う | 歌い手が代表曲を振り返る |
| 2002年 | イルカが新しい編曲で再録音、映画も制作 | 音での捉え直しと別の物語への展開 |
| 2006年 | 德永英明『VOCALIST 2』に収録 | 別の歌手によるカバー |
| 2013年 | 「季節のことば36選」の3月に入る | 題名が季節の言葉としても定着 |
| 2024年 | 伊勢正三とイルカの50周年公演企画 | 作者と歌い手が作品の歩みを共有 |
| 2026年 | イルカ55周年ベストなどに収録 | 後の世代へ届く収録先が増える |
アルバム『三階建の詩』の発表から数える50年と、イルカが歌った1975年から数える50年では、一年の差があります。また、イルカのデビュー55周年は、曲の誕生55周年ではありません。イルカの歌手活動は「なごり雪」のヒット以前から続いています。何を記念する数字かを読むと、似た周年表記の意味が分かります。
駅のメロディーや映画へ|地域の記憶として残った歌
「なごり雪」は、録音を聴く曲であると同時に、駅や映画など別の場所でも受け継がれてきました。同じ題名でも、原曲そのものと、それをモチーフに生まれた作品は区別できます。
大分県の観光情報が紹介する2002年の大林宣彦監督の映画『なごり雪』は、曲をモチーフに作られた映画です。モチーフは、別の作品を作る際に手掛かりや中心の題材となるものを指します。映画の筋をそのまま1974年の歌詞の全設定とするのではなく、歌から新たな物語が作られたと考えると、両方の作品を別々に味わえます。
1996年放送の『あの曲この人』では、イルカがこの曲について語り、歌った番組が記録されています。現在見つかる映像には、初期の録音を使ったもの、後の舞台で歌うもの、本人が来歴を話す番組など、異なる種類があります。聴きたい曲だけでなく、作者や歌い手の言葉に触れたい人には、インタビューという別の入口もあります。
この曲から、カバーによって広がった他の歌へ進みたい場合は、原曲の歌手が分かるカバー曲一覧も手掛かりになります。「なごり雪」以外にも、後の歌い手で知ってから最初の発表へ戻る順番で、作品の違いを聴けます。
最近のカバーから聴く人へ|あいみょん・桑田佳祐の歌唱
あいみょんと桑田佳祐が歌う「なごり雪」は、2025年のイベントでのライブ音源として、2026年10月7日に先行配信されました。原曲から半世紀を経た、別の世代による歌唱への入口です。
| 段階 | 日付・時期 | 内容 |
|---|---|---|
| ライブの開催 | 2025年 | 日本武道館『九段下フォーク・フェスティバル’25』 |
| 一曲の先行配信 | 2026年10月7日 | あいみょん・桑田佳祐「なごり雪」 |
| ライブアルバム | 2026年11月3日発売予定 | イベントの音源をまとめて届ける作品 |
二人で歌うライブの版を初めて聴いた人なら、次にイルカのシングル、さらにかぐや姫の原曲へ進む順番も自然です。最初に出た順へ必ず並べ直す必要はありません。自分が知った声を起点にし、別の歌手の声でも物語の視点やサビの戻り方が残るかを聴くと、歌い継がれるという言葉を具体的な音源の関係で捉えられます。
イルカの歌唱をCDで聴くなら|55周年ベストの収録位置
「なごり雪」からイルカの作品を広く聴きたい人には、2026年の55周年ヒストリー・ベストという選択肢があります。三枚組55曲の中で、松任谷正隆の編曲による「なごり雪」は一枚目の五曲目です。
商品は『「IRUKA Go! Go! ~55th Anniversary~」イルカ55周年ヒストリー・ベスト』、品番CRCP-20623~25です。日本クラウンの公式曲目には、歌手としての歩みから本人が選んだ55曲が掲載されています。
| このCDで聴く例 | 収録位置 | 作者の関係 |
|---|---|---|
| なごり雪 | 一枚目・5曲目 | 伊勢正三の作詞・作曲 |
| 雨の物語 | 一枚目・15曲目 | 伊勢正三の作詞・作曲 |
| 海岸通 | 一枚目・16曲目 | 伊勢正三の作詞・作曲 |
| まあるいいのち | 二枚目・5曲目 | イルカの作詞・作曲 |
「雨の物語」「海岸通」も伊勢正三の作品なので、同じ作者の言葉や旋律を、イルカがどう届けているかへ聴き方を広げられます。その後にイルカ自身が作った「まあるいいのち」へ進めば、歌い手であるだけでなく、作者としての作品も持つことが分かります。誰が作り誰が歌ったかを、曲ごとに分けて聴ける収録内容です。
この三枚組は、かぐや姫の原曲とイルカの二録音をまとめた三種類の比較盤ではありません。原曲へ戻る目的なら『三階建の詩』、イルカのアルバム版を聴く目的なら『夢の人』が対応します。この商品は、イルカの歌唱からほかの代表曲へ進みたい人のための補足の案内です。
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なごり雪についてよくある質問
作者は伊勢正三、原曲はかぐや姫です。曲名の意味と、その後の歌唱についての疑問も、次の四問で確かめられます。
「名残雪」とはどういう意味ですか?
この歌では、作者がその年の最後に降る名残惜しい雪をイメージしています。春が来ても地面に残る雪だけを指す、と狭く捉えない読み方です。
なごり雪の作詞作曲は誰?
伊勢正三が作詞・作曲しました。原曲は1974年のかぐや姫のアルバム『三階建の詩』に入り、イルカの歌唱は翌年のカバーです。
「なごり雪」をカバーした人は誰ですか?
1975年のイルカ版が広く知られています。後には多くの歌手が取り上げ、あいみょんと桑田佳祐によるライブ音源も配信されています。
なごり雪の元ネタは何ですか?
1974年のかぐや姫の歌が原曲です。制作時の情景について伊勢正三は東京駅のホームと列車、積もらない雪を本人の回想で語っています。
まとめ|原曲へ戻ると、別れの物語と歌い継ぐ人が見えてくる
「なごり雪」を聴き直すときは、駅での二人の距離が変わる順序と、戻ってくるサビへ耳を向けられます。かぐや姫の原曲、イルカの二つの編曲、後の再録音やライブへと渡った歩みを知ると、同じ物語が届く声と伴奏の違いから、聴きたい録音も具体的に選べます。
出典・参考資料
- 日本クラウン:かぐや姫『三階建の詩』の曲目と制作表記
- ぴあ音楽:伊勢正三本人による制作・題名・カバーの回想
- 歌ネット:伊勢正三インタビュー、原曲とイルカ版の関係
- 歌ネット:イルカ本人が語るカバーとアルバム版の録音
- 歌ネット:歌詞・作者・イルカ版の編曲表記
- TOKYO FM:シングル版と松任谷正隆の編曲
- 日本気象協会:「季節のことば36選」
- 大分県観光情報:津久見駅の歌碑、メロディーと映画
- 放送ライブラリー:1996年『あの曲この人』の番組記録
- サザンオールスターズ公式:2026年の先行配信とライブアルバム発売予定
- ユニバーサルミュージック:德永英明『VOCALIST 2』の発売日と曲目
- 日本クラウン:イルカの作品と55周年ベストの全曲目
- 日本気象協会:季節のことば36選の選考を終えて
情報確認日:2026年11月2日。






